恐怖の50回告白事件 前編

えもーしょん 高校生篇 #58

恐怖の50回告白事件 前編

2013〜2016/カイト・高校生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.11.04

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#58
「恐怖の50回告白事件 前編」
(2013〜2016/カイト・高校生)

ボクは少しおかしいのかもしれない。

初めて、そう思ったのは

高校三年生の夏。

花火の音が鳴り響き、道を走る車の運転手も空を見上げている中

ボクは1人涙を流し、トボトボと歩いていた。

恋に溺れ、告白のドキドキに執着しすぎた結果である。

あれは、高校二年生の春。

湘南の学校から、千葉の学校に転校したときのこと

うまく言葉を選べないが

ボクは田んぼが嫌いだ、虫も、森林も結構苦手だ。

それに加えて、遊ぶ場所のない千葉の海沿いの学校になにも魅力を

感じることが出来なかった。

こうなったら、新しい学校の可愛い女の子全員と付き合うしかない。

意味がわからないけど、それくらい精神的に追い詰められていた。

転校先の学校は1学年5クラス。

A~Eまで、転校初日に廊下を歩きリサーチしたところ

Bクラスの、窓側1番後ろに座る茶髪の女の子が1番可愛かった。

揺れるカーテンと綺麗な髪が見事にマッチ。

瞳の色も茶色、噂では部活は陸上部。

種目は不明。

名前はみおちゃん。

彼氏は今のところいないらしいが、みんなが狙っているらしい。

が、元彼が学校1番のヤンキーらしく

怖くて、あまり告白しないらしい。

転校生のボクには絶好のチャンスだった。

なにも知らないフリができるからだ

そうと決まれば早速、作戦を立てる。

さっき友達になった柔道部の友人と

野球部の友人に手伝ってもらい、まずは本当に彼氏がいないのかリサーチ。

放課後、校庭でトラックを走るみおちゃんを3階のベランダからこっそり覗く。

真面目に部活動をする姿に2人は罪悪感を感じているようだったが

なぜか手伝ってくれた。

「おれ、あそこの隣の子好き」

そう言ったのは柔道部の友人。

「え!? マジ!?」

と野球部の友人が言った。

「お前は?」

「えー美術部のかなえちゃん」

「は!? マジ!? 無理なんだけど!」

「は!? いやあっちの方が無理」

「じゃあ、誰がいいの?」とボクが聞くと

2人は口を揃えて、「みおちゃん」と言った。

そうか、わかったぞ

こいつら、ボクを使って一緒にみおちゃんを狙っている。

誰が先か、高校二年生の春。

青春の戦いが始まった。


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