折れたボードとボクの心

えもーしょん 中学生篇 #34

折れたボードとボクの心

2010〜2013/カイト・中学生

Contributed by Kaito Fukui

People / may.28.2020

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#34 「折れたボードとボクの心」
(2010〜2013/カイト・中学生)

松林を抜けて、海へ続く道を歩けば

完璧な、台風スウェルと

みんなの姿。

心臓の、バクバクする音と

波の音。

ストレッチなんかしないで

リーシュをつけて

沖へ向かう。

幾度となく押し寄せる

波も、今日ばかりは

新しいボードのおかげで

全然、イラつかない。

沖へ出れば

みんなの姿。

「おはよう」

と、仕事前のみんなに挨拶をして

なるべく、沖へ

ボクは向かう。

セットだけを狙うのだ。

みんなが、手前で乗る中

ボクは真っ黄色の

目玉焼きのような、ウエットスーツを着て

辛抱強く、ひたすら

セットを待つのだ。

台風スウェルの日の

セットの間隔はかなり長い。

けれど、その分

ドカーーーーーーン!

と、お化けがやってくるのだ。

やってくるからと言って

はーい、ご馳走です。

とは、なかなかいかない。

湘南は、ダンパーだから。

オバケセットが、見えたらすぐに

ピークから、切れ目を探して

移動する。

けれど、ピークから離れすぎると

誰かに取られてしまうし。

グーフィーへいくフリをして

レギュラーへ向かうのは

朝から少し罪悪感。

だから、やはり

みんなよりも沖で待って

誰よりも早く

テイクオフする必要があるのだ。

ついに、やってきた。

オバケセット。

手前のみんなが、急いで沖へ向かってくる。

へへーん。残念。

と、まだまだたどり着かないみんなを

見下ろし

ボクは、そっと切れ目を見つけ

移動する。

パドルをし、いざ!

乗ろうとしたその瞬間。

見たこともないほどに

突然掘れ上がり

見事なまでに、一直線のダンパーさん。

「あ!」

と、言いつつも

少し覚悟を決めて

降りる事に。

フワッと浮いて

ストンと落ちる。

バキッ! と音がして

ボクは巻かれる。

グルグルグルグルと

巻かれているボク。

左足のリーシュ。

なんだか、軽い。

嫌だ。嫌だ。嫌だ。

絶対、嫌だ。

こんなにも、巻かれていたい。

なんて、思うのはこの日だけだった。

頭上に光が見え

ぷは! と浮上する。

そこに待っていたのは

あまりにも、切なく

無残な、ボクの新しいボードだった。

彼は、見事に真っ二つに折れ

もう一方の片割れは

ビーチに流れ着いていた。

巻かれている間リーシュコードで

引っ張られ

リーシュカップがえぐれている。

「あー、最悪だ」

とにかく、折れた。

テール側のボードを拾い

次に来る波に

ビート板のように乗り

ノーズ側を迎えに行く…。

続く。

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