パーティー

海と街と誰かと、オワリのこと。#27

パーティー

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.02.21

大好きな海を離れ、アーティストになったオワリ。居心地の悪さを感じながら、それでも繰り返されていく毎日のあれこれ。「本当のボクってどんなだっけ?」。しらない街としらない人と。自分さえも見失いかけたオワリの、はじまりの物語。


バイトが終わり、オフィスを出ると雨は止んでいた。ジンとの待ち合わせの時間までまだ時間があるから、自転車で代官山駅まで向かうことにする。シャカシャカジャケットのお陰で憂鬱だった雨の日は快適になったけれど、やっぱり晴れている方が気分は良い。

松陰神社前を曲がって中目黒駅の方へ向かう。自分が走る道の名前、目的地まで大体マップを見なくてもたどり着けるようになった。すっかり東京に染まり始めている。雨に濡れた車がキラキラと光っている。海の反射とはまたすこし違う鉄の輝き。最近よく波に乗っているときの景色が夢に出てくる、東京の生活は楽しいはずなのに。どこか完全に楽しめない部分がある。

中目黒駅に着くと、自転車から降りて目黒川の方へ向かう。桜は散って綺麗な緑が続いている。出番が終わってしっかり仕事を果たした姿だ。大きな坂を登って代官山駅に到着するとジンが待っていた。

僕「ジン、お待たせ」

ジン「お疲れさま」

ジン「電車で来ると思った」

僕「オフィス出るときまだ早かったから」

ジン「なるほどね」

ーー渋谷方面へ歩く

僕「どこに行くの?」

ジン「知り合いのお店がオープンするから、そのパーティーだよ」

僕「何屋さんなの?」

ジン「洋服かな、カフェも一緒らしい」

僕「へぇ〜便利だね」

ジン「最近多いよ、そういうお店」

僕「そうなんだ」

ジン「オワリはあんまり買い物しないもんね」

僕「そうだね、あんまりしないね」

僕「でもこれ、最近買ったばかりだよ」

ジン「良いじゃん!似合ってるよ」

僕「ありがとう」

ジン「そういえば、オワリに仕事頼みたいって言ってる人がいるんだけど紹介してもいい?」

僕「何の仕事?」

ジン「Tシャツのデザインって言ってたよ」

僕「いいの?僕で良ければやってみたいな」

ジン「今日いるから紹介するよ」

僕「ありがとう」

ジンはきっとこのために今日誘ってくれたのだろう。話しながら歩いていると目的のお店に到着した。

大きなガラスで道路からお店の中が全部見えるようになっている。入り口はカフェのようになっていてパーティーに来た人達がドリンクを注文している。それにしても全員お洒落だ。全員がインフルエンサーに見える。豪華なパーティーだ。

続く



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