国道を越えれば

えもーしょん 高校生篇 #39

国道を越えれば

2013〜2016/カイト・高校生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.07.02

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#39
「国道を越えれば」
(2013〜2016/カイト・高校生)

親友のこうやが

朝早くから、自慢のバイクと共にやってきた。

自分の家のように

玄関のドアを開けて。

気がつけば、ボクの横で

ボクのピザトーストを食べている。

ボクのピザトースト…。

ボクの朝ごはんは

主食を失い

オレンジとキウイ、ヨーグルト。

なんとも質素な。

パパのお給料日だと言うのに…。

プールへ行きたいボク。

海へ行きたいこうや。

どうやら、単に海水浴。

ではないようだ。

話を聞くと

素潜りに行きたいそう。

お互い、話の着地点を見つけ

結局、海の方へ行くことに。

こうやのバイクは、50ccではない。

大型バイクだ。

それに、ハンドルの横の

小さなレバーを上に上げてみよう。

プシュ〜。

と、車高が上がり

下に下げると

プシュ〜

車高が下がるのだ。

今度は、変身するのでは?

まるで、トランスフォーマーのよう。

自慢のバイクにまたがり

「よし! 行こう! ナビ頼む!」

こんな朝早くから、元気いっぱい。

違う意味で暑いよ…こうや。

「わかったよ〜、ひたすらまっすぐだよ」

「オッケー!」

プシュ〜

と、車高を上げ

「それでは、海の方へ」

「はい、海の方へ」

ぶぉぉぉぉおおおぉおぉん!

まっすぐ、ひたすらまっすぐ。

ボクらは、国道を走る。

いすみ市を抜けると、大原の町に着く。

「伊勢海老水揚げ量日本一!」

信号待ちをしていると

大きな看板が目に入る。

「伊勢海老…」

ハンドルを握るこうやの

心の声が確かに、聞こえた。

「食べようね」

そういうと

「絶対食べよう! 獲ろう!!!」

信号が変わり、再び

ボクらは、まっすぐ走る。

御宿の海水浴場を横目に

ビキニの女の子を横目に

見ない見ない、見ない。

心を鬼にして…。

ふと、こうやが止まる。

「どうした?」

「かいと」

珍しく、海の方を見つめている。

「波、いいよ」

馬鹿野郎。

この野郎。

「やめよう、行こう」

「え、いいの?」

「え、いいの!?」

「あ、でもあれか。海水浴場はサーフボード使えないか」

「ボディーボードなら、大丈夫だよ」

「ボディーボードかぁ、ってことはレンタル?」

「まぁ、そうだね」

「レンタルするのはなんか違うか」

「まぁ、そうだね」

「なんか、誰かいないかなぁ」

「そんな、タイミングよく?」

「いないよ、いいよ、行こう」

「そ、そう? 行くかぁ! 伊勢海老!!!」

ぶぉぉぉぉおおおぉおぉん。

続く


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