焼き芋

えもーしょん 小学生篇 #61

焼き芋

2003〜2010/カイト・小学生

Contributed by Kaito Fukui

People / nov.16.2020

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#61
「焼き芋」
(2003〜2010/カイト・小学生)

小学校に入学し、夏も超え秋も終わろうとしていた。

そんなある日。

「サツマイモを持参して来たら焼いてあげる」と担任の先生が言った。

ボクらは、「焼いてあげる」この言葉に以上に反応し

なんのことかわからないけど

焼いてくれるらしい!!!

と、家に帰りママに伝えて

300円を持って、友人のトモ君の家に集合することになった。

トモ君は、ボクに初めて人間の内部の美しさを教えてくれた友人。

彼の家はどこからどう見ても、お金がなかった。

「貧乏、貧乏」といじめっ子がトモ君をいじめるのではないか。

と、みんなでヒヤヒヤしていたけど

そんな、いじめっ子達でさえもドン引きする程の家庭だった。

今は平成。

昭和初期でもないし、もちろん戦時中でも戦後でもない。

それでも、ふとトモ君を見ると一瞬にして

景色が戦時中、いやそれ以前になるほど

彼は普段から色のついた服を着ていなかった。

基本、春でも夏でも秋でも冬でもタンクトップ。

ズボンも、オールシーズン体操服の半ズボン。

靴下を履いているのは見たことがない。

運動会はもちろん、体育の時間は基本裸足。

そんな彼のお家は、学校のすぐそばにある商店街の八百屋さんの二階だった。

八百屋さんの二階と言っても、八百屋の倉庫と言ったほうが正しいかもしれない。

お家には、玉ねぎの入ったダンボールや八百屋の使うザルや備品が沢山置いてある。

それに、八百屋の奥から彼の家に続く階段があるけど、どこにもドアがなかった。

そんな決して裕福とも一般的ともいえない家庭のトモ君だけど

彼も彼のパパもママも全然困った顔をしないのだ。

トモ君のお家は、いつもいつもポップだった。

ある日、「ドアがないじゃん」と空気の読めないバカがトモ君に言った。

すると、トモ君は「3段目からぼくのうち」と笑って言い、

さらに「ほら」と階段の3段目を指差した。

ボクらは3段目を見ると、しっかり「前田」と階段に書いてあった。

が、毎日毎日ここを通るたびに擦れて消えてしまうみたいで

週に1回、鉛筆で書きなおしているらしい。

トモ君のお家に行くと絶対パパとママがいつもいる。

パパはいつもなにかを作ったりしているけど、トモ君もなにをしているのかわからない。

ママは「自称専業主婦」と自分で言っているけど

それがなんなのかは、ボクは知らない。

続く


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