夏、終わった?嘘でしょ!?

えもーしょん 中学生篇 #49

夏、終わった?嘘でしょ!?

2010〜2013/カイト・中学生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.09.03

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#49
「夏、終わった?嘘でしょ!?」
(2010〜2013/カイト・中学生)

目黒先生からの、お誘いの電話を待っていたら

いつのまにか、夏が終わってしまった。

一途もいいことだが

それはそれで、損な時もあるかもしれない。

ある日、近くの大きな公園で

毎年恒例の、夏祭りが行われていた。

当然、先生を探しに

一番綺麗な靴を履いて、首がよれていないTシャツを着て

ボクも出かける。

公園に着くと、1人の女の子に声をかけられた。

少し日に焼けた肌、背が高く足も長い、そして細い。

顔も小さく、目がぱっちりのエマちゃん。

陸上部で走り幅跳びをしている。

「かいとくん!」

と、エマちゃん

「あれ、合宿は?」

「さっき帰ってきて、そのまま来たの!」

「そうなんだね、すごい日に焼けたね」

「もう、見ないでー!」

「1人で来たの?」

「ううん、友達と来たけど別行動なの!」

「かいとくんは?」

「1人だよ」

「チョコバナナ食べる?」

と、エマちゃん。

チョコバナナ…!

「食べよう!」

バナナ食べれないけど…。

エマちゃんは、余裕~と言って

ジャンケンに勝ち、3本ゲット

ボクにひとつくれた。

陸上部だから? たくさん走るから? 分からないけど

ボクが一本食べるよりも、先に2本を食べてしまった。

大きな、芝生に座り

花火が始まるのを2人で待っていると

だんだんと、屋台の方から人が集まってきて

同級生のカップルも手を繋いで前を通る。

「あの2人付き合ってたの!?」

と、少し驚いた様子のエマちゃん。

「どうしたの?」

「わたし、あの彼氏に合宿中告白されたの!」

「えぇ! すごいね!」

「なんか、ニヤニヤして変だったから断ったのよ!」

「あちゃー」

「そういえば、かいとは誰か好きな人いないの?」

「ん? いるよ」

「だれ?」

「目黒先生」

「…?」

「学校の? B組の担任の?」

「そうだよ」

「ほんとに?」

「ほんとだよ」

「どの辺が好きなの?」

「えー、なんだろう。仕草とか? お茶目なところとか?」

「え!?」

「?」

「エマちゃんも目黒先生に少し似てて好きだよ」

バッチーーーーーーーーーン!!!

突然飛んできた、ビンタは

ボクの耳に当たり、キーーーーーーンと言って

エマちゃんの声がこもっている。

「おばあちゃんってこと? 老けてるってこと? ひどい!」

エマちゃんが泣いている。

言い忘れていた。

ボクは、お年寄りなガールが好き。

ゆっくり、そおっと歩く姿や

和菓子の好みも合うし

なにより、無言の沈黙を許してくれる。

言ってはいけない一言だったようだ。

走り去る、エマちゃん

遠くに、目黒先生。

複雑な2013年、夏休み。


アーカイブはこちら。
小学生篇
中学生篇
高校生篇
大人篇

Tag

Writer