電車に乗って

えもーしょん 大人篇 #38

電車に乗って

2016~/カイト・大人

Contributed by Kaito Fukui

People / jul.08.2020

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をエッセイと写真で綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#38
「電車に乗って」
(2016~/カイト・大人)

頭が痛い。

寝ても起きても痛い。

今にも脳みそが爆発しそうだ。

それに加えて、

肩も痛い。

どのあたりからというと、

ちょうど肩甲骨の下から背骨に沿って、

首の上までまるで一枚岩のように

凝り固まっている。

さらには、

腰痛も。

この腰痛がかなりの厄介者だ。

この腰痛のせいで、

ボクの足がまるで

生まれたての小鹿のように力が入らず、

フラフラしている。

そんな僕を見て、

「大丈夫?」

と言いながら

大きめのトートバッグを彼女が渡してきた。

「うん、なんとか」

とボクなりのSOSを出すも

彼女には届かない。

楽しそうに笑う彼女は

バスに乗り、

「2人分でお願いします」

とICカードをタッチする。

「ありがとう」

そう伝えると、

彼女は席を見つけ、

こっちこっちとボクを呼んだ。

「よいしょ」

と彼女の隣に座る。

大きめのトートバッグを見た彼女は

「大丈夫? 重くない?」

と言った。

「うん、なんとか」

と再びSOSを出すも、

「それはよかった」

彼女には届かない。

バスは駅に着き、彼女が電車を調べる。

「あと10分で、快速が来るよ」

「あ、ラッキーだね」

「ボックス席だといいね」

「ボクは疲れたから、

グリーン車に乗りたい」

「快速だからグリーン車なんて無いよ」

そんなことはない。

ボクは知っている。

せっかく機嫌のいい彼女の機嫌を

まだ始まったばかりで、

悪くするわけには行かない。

「うん、そっか、そうだね」

とボクはポケットからICカードを取り出し、

改札を抜ける。

ホームへ行くと、

やはりそこには、

グリーン車チケットの販売機がある。

ボクは彼女から見えないように、

スッと前に立つ。

しかし、

「あれ、グリーン車あるかも」

と彼女が言った。

ボクは彼女の気分が悪くならないように、

たまたまあったね、ラッキーだね

と言った。

「うん、そうね」

と彼女が言った。

ボクらはグリーン車のチケットを買って、

グリーン車の乗車位置で、

電車を待っていた。

まもなくして、

電車がやってくる。

一階か、

二階か、

ボク達は悩んで、

二階席に行くことに。

「せっかくだからね」

と階段を上る彼女。

「そうだね」

とボクも階段を上る。

車内販売のお姉さんは、

あまりタイプでは無かったので

何も買わなかった。

「そういえばさ、どこへ行くの?」

とボク。

「ああそうね、熱海に行こう」

「熱海かぁ…。」

「初老にはぴったりね」

「初老って言わないで、傷つくから」

「ごめんね」

ボクらは寄り添って、

眠りに着く。

「次は、熱海。熱海。」

車内アナウンスが聞こえて目が覚めた。

「あっぶねぇ…」

そう言うと彼女も起きた。

「大丈夫だよ、

この電車熱海が終点だから。」

「あ、そうなんだ」

湯河原を出ると、

すぐに熱海についた。

相変わらず、

肩こり、腰痛、頭痛の三痛痛い。

三痛は治らない。

「まだ頭痛いの?」

心配そうに彼女が言った。

「うん、痛い」

そう言うと、

彼女は大きめのトートバッグを見て

「大丈夫? 重くない?」

と言った。

「うん、なんとか」

とボクが言うと、

彼女は

「うん、よかった」

と言った。

続く。


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