海と街と誰かと、オワリのこと。#2
ゆき
Contributed by Kite Fukui
People / 2023.01.09
朝、鼻先がひんやりして目が覚める。布団からはみ出た顔だけが異常に冷たい。
「ほぉ〜ぉ」
とんでもなく白い息が出た、やはり今日はいつもより明らかに寒い。なんだ、この異常な寒さは。しばらくぼんやり天井を見つめる。隣の部屋の弟が起きて階段を降りる音が聞こえる。お母さんがテーブルに食器を並べる音も、お父さんの髭剃りの音も。現実世界を感じれば感じるほど起き上がらなければならないとプレッシャーを感じる。。。。
「ふんっ」
起き上がろうと頑張ってみるも腹筋が言うことを聞かない。全然言うことを聞かない。罪悪感を感じるけど、怠け心は体を動かすことはできない。もう一度うずくまって寝る。
「ブーーーーッブブッーーーー」
「ブーーーーッブブッーーーー」
「ブーーーーッブブッーーーー」
「ブーーーーッブブッーーーー」
ーー携帯のバイブレーション
「なによ、、、、」
布団の中から手を伸ばし、ベットに伝わる振動をたどって携帯を探す。ようやく確保布団の中へ。
ーー新着メッセージ20件
ラインを開く、彼女のゆきからだった。
熊が拳を握り背後に炎がメラメラと揺れているスタンプが勢いよく大量に流れた。
「いまどこ?」
このメッセージの「?」が優しいものではない気がして
「おはよう」か「ごめん」
第一声はどちらがいいか、画面を見つめ考える。
ゆきは高校に入学してすぐ廊下ですれ違い一目惚れ。即、告白ののち振られてしまい夏の地元の大きなお祭りで再アタック。
「一旦考えさせて」
と言われてしまったが夏休みが終わる少し前に
「いいよ」
一言、ラインで送られてきた。それから一度も別れることなく今に至る。
彼女は、成績優秀で静かな人だ。背が少し高くて、すらっとしていて綺麗な黒髪。部活は美術部所属。たまに廊下に飾られている作品をこっそり見にいくけれど、いつも深い青色の背景に白い花がドットのようにキャンバスに点在している。
派手なグループには属さず、仲の良い友人「あきほ」と2人で行動している。
ーー♪〜♫〜♪♬〜♪〜♫〜♪♬〜
しばらくすると、ゆきから電話がかかってくる。
ゆき「もしもし?」
僕「ごめん、おはよう」
ゆき「ごめんじゃないよ!大丈夫?」
僕「大丈夫??」
ゆき「今日登校日だよ」
僕「忘れてた。。。。」
ゆき「プリントもらったから、あとでお茶しようね」
僕「ごめんね、ありがとう。」
ゆき「はぁい、あとでね」
ーー「寝てた?」
電話を切る寸前、ゆきの声の奥からあきほの声が聞こえた。
続く。
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