えもーしょん 小学生篇 #51

ガソリンスタンド

2003〜2010/カイト・小学生

Contributed by Kaito Fukui

People / sep.21.2020

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#51
「ガソリンスタンド」
(2003〜2010/カイト・小学生)

ボクの夏休みはほとんど

サーフィンの記憶しかない。

夏休みは特に

大会に出場するため、全国各地を駆け巡る。

ホテルに泊まったり、キャンプをしたり

前日、ギリギリに会場に着いた時は

車中泊もしたり。

24時間テレビが終わると

ボクの夏休みも、遠征も終わりが見えてくる。

8月下旬の、全国大会

全国から、同い年の選手が集まり競い合う1週間

毎年この大会を最後に

ボクもみんなも、長い遠征、合宿、修行を終え

やっと、自分の家へ帰っていく。

その年、ボクもそのつもりでいた。

一コケという、悪魔の言葉がある。

みんなにもゾッとして欲しいので特別に話したい。

一コケ、それは文字通り

1回戦負け。を意味する。

は、なーんだただの1回戦負けか。

と、思った方は違う、聞いてほしい。

この一コケには物凄い重い背景がある。

もちろん、1回戦負けなんて誰もしたくない。

けど、勝負の世界。

勝者と敗者は必ずいるもの。

サーフィンの大会は一般的に

4人1組で行われる。

大体、1つのラウンド12分くらい。

4人のうち、ポイントが高い2名が

次のラウンドへ進出できるのだが

2名は、魔の一コケとなる

そう、12分で運命が決まるのだ。

ふーーん、そうかあ。

ボクも小学校低学年までは、みんなと同じような気持ちだった。

しかし、成長するにつれ

身の回りのいろいろな数字を理解し始める。

お菓子の値段、マックの値段、100円の価値など

普段、自分が手にする金額は

多くて1000円ほど

1000円もある時には無敵にさえ思える。

そんなある日、いつものように

遠征に向かう途中、パパが

「ガソリン入れなきゃ」と言った

恥ずかしながら、それまでボクは

ガソリンは、ガソリンスタンドで

勝手に配られている物だと思っていた。

つまり、タダだと思っていた。

「どうやって入れるのー?」

と、パパに言うと

「やってみるか?」

と、言った。

ボクは、嬉しくなって

初めて、静電気除去シートに触れ

ガソリンタンクの蓋を開けた。

そして、憧れていた

給油機を、タンクに差し込み

ガソリン出てるの? と確認して

吹きこぼす、お決まりも経験した。

問題は、その後だった。

給油を終え、満足げに車へ戻ろうとした時。

「かい、まだだぞ」

と、パパが言った。

「え???」

まだなにかやっていいの?!

ボクは、嬉しくなり

パパの方へ向かう、が

パパの手にはお財布。

????????????

続く。

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