いつになったら

海と街と誰かと、オワリのこと。#11

いつになったら

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.01.24

大好きな海を離れ、アーティストになったオワリ。居心地の悪さを感じながら、それでも繰り返されていく毎日のあれこれ。「本当のボクってどんなだっけ?」。しらない街としらない人と。自分さえも見失いかけたオワリの、はじまりの物語。


ゆきに振られてから、初めて迎えた朝は最悪だった。泣きすぎて酸欠だったせいか頭がジンジンして痛いし、眠りながらも泣いていたのか鼻の周りが鼻水が固まってカピカピになっていた。ゆきに「おはよう」と今日からメッセージを送らないのかと思うと涙が出た。ゆきにメッセージを送らないこの携帯は何の意味があるのか、出掛けた先で充電がなくなったときのようだ。何の役にも立たないちょっとポケットを重くする鉄の塊だ。

そしてカーテンを開けて、朝日を見た。春の暖かい光が枯れた心をじんわり温めてくれた。昨日よりも泣き止むのが早いことに気がつく。いつになったらこの悲しい気持ちが落ち着くのか、明日なら明日、来週なら来週の何時くらいか教えてもらえれば少しは楽なのに。と思った。携帯で「失恋 何日で泣かなくなる」と検索。

「大体、平均1ヶ月から3ヶ月」

「時間が必ず解決します」

ーーーー1ヶ月。。。。

長すぎる、1ヶ月からって。3ヶ月経ったらもう夏なんだけど。
暑いなか僕は汗をかきながら燦々と降り注ぐ夏の太陽の下涙を流すのか。
かき氷を食べながら、海の家でラーメンを食べながら、ゆきがいつも食べていた冷やし中華を食べてまた泣くのか?そんな夏は嫌だ、そんな未練たらたら野郎は嫌だ。強くなれ、強くなるんだ。ちょっとでも良いから、強くなれ僕の心!と何度も自分を励ました。

何となく誰かに明言的な言葉を投げ掛けてもらいたい気分だった。
AIなら携帯を持ち、失恋した数々の男女の検索履歴から最高の励ましの言葉を選んでくれるのではないか。そう思った。

僕「Hey Siri」

僕「強くなりたい」

Siri 「すみません、よくわかりません」

ーーーー涙

そうだよね、自己解決しないと。前に進めないよね。
返信し忘れていたあきほへ「ありがとう」とメッセージを送り、ゆきのいない今日からの日常は突然言葉も通じない外国へ飛ばされたようだけれど。何とか頑張って前に進むと決めた。

続く



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