初めてのPOP UP

海と街と誰かと、オワリのこと。#25

初めてのPOP UP

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.02.16

大好きな海を離れ、アーティストになったオワリ。居心地の悪さを感じながら、それでも繰り返されていく毎日のあれこれ。「本当のボクってどんなだっけ?」。しらない街としらない人と。自分さえも見失いかけたオワリの、はじまりの物語。


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ーーアラームの音

大音量のアラームの音で目が覚める。寝不足と疲れで目の下がスースーとする。もう一度眠ろうとする前に、気合を入れて起き上がる。少し高い温度のシャワーを浴びて、荷物を持ってロビーへ向かう。コーヒーメーカーでコーヒーを淹れてソファに深く座り2人を待つ。早く部屋を出て正解だった。もしここで寝てしまっても、寝ることはないけれど万が一寝てしまっても絶対2人の目に止まるはず。

もう一杯、コーヒーを淹れていると加藤さんがやってきた。

加藤さん「おはよう、昨日は遅くまでごめんね」

僕「おはようございます、全然大丈夫です」

加藤さん「眠れた?」

僕「はい、一度も起きないくらいぐっすりでした」

加藤さん「よかった、よかった」

加藤さん「今日も夕方疲れてたら泊まっちゃおう」

僕「はい、ありがとうございます」

加藤さんと2人で、コーヒーを飲んでいると一番眠そうな林さんが来て時間がないから行こう。と言った。ホテルから会場までは歩いて5、6分ほどだった。会場に到着すると2人はシャキッとして、いろんな人へ挨拶に行った。僕はブースの用意してもらったテーブルにTシャツを並べて椅子に座って2人を待つ。

だんだんと、イベントに参加する人たちがやって来て賑わい始めた。発電機の音がいろんな方向から聞こえる。イベントは始まって、会場奥のステージの方へ沢山の人が向かって行く。少しして、僕よりも少し年上に見えるカップルがTシャツを見てくれた。

彼女「お兄さんが作ったんですか?」

僕「はい、初めて作ったんです」

彼女・彼氏「かわいい!いくらですか?」

僕「1000円です」

彼女・彼氏「安くない!?1つづつ買います!」

僕「ありがとうございます!!!!!!!!!!!!!」

ーーーー初めて自分が作った物が売れた。。。。

すごく嬉しい。加藤さんと林さんに感謝。本当によかった。
2人はTシャツすぐに着てくれた。そして、テーブルの前で2人が楽しそうにしてくれたから2人を見て他の人が見にきてくれた。なぜか僕ではなくて2人が接客をしてくれて、嘘みたいに売れてしまった。

僕「ありがとうございます」

彼女・彼氏「全然!!明日もいるの?」

僕「はい、明日もいます」

彼女・彼氏「明日も見にくるね!」

僕「ありがとうございます!」

2人はステージの方へ向かった。さっきから、心配そうに遠くから見てくれていた加藤さんがきてくれた。

加藤さん「オワリ君、すごいじゃん!あと6枚?」
僕「はい、最初に買ってくれたカップルの2人が凄い接客してくれて。友達も呼んでくれたんです」

加藤さん「すごいな、でもよかったね」

僕「ありがとうございます」

加藤さんはまた戻っていった。加藤さんが戻ってからしばらくして、同い年くらいのスケーターがやってきた。

ジン「これめちゃいいですね」

僕「ありがとうございます」

ジン「アーティストですか?」

僕「いや、バイトです」

ジン「バイト?」

僕「バイトで作ったんです」

ジン「やばいね笑 おれ、ジンって言います」

僕「ジン君、オワリです」

ジン「オワリ、珍しい名前だね」

僕「ジン君も珍しいでしょう」

ジン「君はいいよ、何歳?」

僕「今年19だよ」

ジン「タメじゃん!インスタ教えて」

僕「うん、いいよ」

僕「ジンはスケーターなの?」

ジン「ミュージシャンだよ、バンドやってるの」

僕「そうなんだ、かっこいいね」

ジン「そう?あとであそこで演奏するからおいでよ」

僕「そうなの!!!???めっちゃ売れっ子じゃん!」

ジン「全然、知り合いが出してくれたの」

僕「何時くらい?」

ジン「16時かな」

僕「16時か、全部売れたら行けるから頑張るね」

ジン「まじ?おれ暇だから手伝っていい?」

僕「いいの?ありがとう」

ジンは堂々として、話上手だ。シティボーイとは彼のことを言うのだと思う。それからは、僕が恥ずかしがってお客さんに話かけられないと、すかさず横から人が入ってきてみんなを笑わせてくれた。結局残っていた6枚全部ジンが売ってくれたようなものだった。15時頃になると、そろそろ行こうか。とジンが言った。加藤さんに遊びに行っても大丈夫か聞くと、夜まで帰ってこなくていいとお小遣いをもらった。加藤さんにもらったお小遣いでジンとタコスを食べ、彼の演奏を見た。ジンは知り合いが出してくれたと言っていたけれど、普通に人気のバンドだった。同い年の彼がステージで演奏をしている姿を見て、僕も何か頑張ろうと思った。

ジンのバンドの出番が終わり、夜まで2人でスケートをしたり彼の知り合いのブースへ行って沢山の人を紹介してもらった。ジンはバンドのメンバーと帰り、僕は加藤さん林さんのブースへ帰った。

加藤さん「楽しかった?」

僕「すっごい楽しかったです、友達ができました」

加藤さん「それはよかったね!」

林さん「オワリ、すごいじゃん!全部売れたの?」

僕「はい、最初にきてくれたカップルの2人と友達が売ってくれました」

林さん「よかったなぁ」

林さん「売り上げは貯金しとけよ」

僕「いいんですか」

林さん「もちろん、よく頑張った」

僕「ありがとうございます」

こうして初めてのイベントは無事終わった。2人はヘトヘトだけど、僕は疲れを感じないほど楽しかった


続く



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