僻地で

えもーしょん 大人篇 #50

僻地で

2016~/カイト・大人

Contributed by Kaito Fukui

People / jul.24.2020

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#50
「僻地で」
(2016~/カイト・大人)

薄暗い空。

ラジオからイーグルスの

HOTEL CALIFORNIA が聞こえ目が覚める。

朝日が登ろうとしている。

急いで車のドアを開け写真を撮った。

山から登る太陽。

車から聞こえる

HOTEL CALIFORNIA。

こんな、素敵な朝はない。

しばらく眺め、海の様子を見に行くと

ビーチを走る1人の女の子がいた。

こんな離島でも走る人がいるのか…

「地元の人にしては、外国人過ぎるか…」

車に戻り、マップで島を見てみようと

携帯を開くが圏外。

「これだよ、これ」

嬉しくなって、辺りを見渡すと

電信柱がないことに気がついて

大きく深呼吸をする。

深呼吸をして、罪悪感を感じないのは

いつぶりだろうか?

名一杯、肺に空気を入れ

大きく息を吐いた。

なんだか、スッキリすると

お腹が空いて

再び、車に戻り少し島をぐるぐると回ってみる。

コンビニなんて、あるはずがなかった。

ぐるぐる、ぐるぐると回っていると

不審に思った、地元のおじさんが

やってきた。

コンコン

と、窓をノックするおじさん

「どうした?」

と、突然聞かれたので

言葉に詰まる。

「あ、あのー」

「ご飯を買いたくて」

と、ボク。

「まだ、どこも開かないから本島に戻って買ってきな」

と、おじさんはタバコを吸いながら言った。

「あ、ありがとうございます」

と、お礼を言いながら

ふと、何か違和感を感じた。

おじさんのタバコだ。

あれは、アイコスの新作。

電波も繋がらないような僻地で

なぜ? おじさんはアイコスの新作を持っているの?

と、どうでもいいことを考えながら

車を走らせ、本島に戻った。

「確か、マングローブ林の先にローソン」

「あ、あった」

駐車場に車を止め

パッと前を見ると

当然だが、ローソンがある。

が、その後ろにはマングローブ林が広がっている。

「ふふふ」

コンビニに入ると

いつもの景色と変わらない。

一歩外に出れば、南の島にいるはずなのに

お店の中にいると、東京と変わらない。

なんだか、不思議になり

雑誌コーナーから

外のマングローブ林を見つめる。

誰かが、ATMの方へ向かった。

すると、ATMから

ジャラララーン、ハイサーイ! と、聞こえ

「あ、沖縄バージョン」

やっぱり、ここは沖縄か

と、2リットルのお水とお菓子、それからおにぎりと

何かあった時用に、カップラーメンを買った。

離島へ戻ると、さっきのおじさんが

ウエットスーツに着替えている。

軽トラックの横に車を止めておじさんの方へ

「さっきは、ありがとうございました」

と、ボク。

「おぉー行けたか?」

と、おじさん。

「あ、はい。ちゃんと買えました」

「どこに行くんですか?」

「タコを取りに行くんだよ」

「タコとれるんですか?」

「おお、とれるよ」

「一緒に行ってもいいですか?」

「いいけど、泳げるのか?」

「あ、はい。人並み以上には」

「人並み以上…か」

「寒いぞ?」

「ボクもウエットスーツあります」

「おぉ、おれのよりいいやつじゃねーか」

と、ボクはおじさんと離島へ来て

タコを獲ることになった。

海へ入り、ゴーグルで覗くと

ゾッとした。

それは、見たこともないほど透明で

何メートルも先までハッキリと水中の様子が見えたからだ。

こっち、こっち。

と、おじさんの指示に従い

潜っては、岩の裏にいるタコを獲りおじさんに渡していた。

すると、もうこいつは大丈夫。と思ったのか

おじさんは、ここは任せるね。

そう言って、もっと遠くの方へ行ってしまった。

こんなにも、綺麗な海は初めてだったので

夢中になって、潜っていると

遠くの方から、おーい! おーい!!!

と、おじさんの声がした。

「どうした?」

と、顔を上げると

ボクは、再びゾッとした。

さっきまでいた、場所から

遥か沖の方へ流されていたからだ。

こんな時はどうするか…

「せっかくだから、漂流しよう」

泳ぐ事を諦め、仰向けにぷかぷか浮いているボクは

「結局、こうして流されてしまったら都会で築いた地位や名誉や人間関係は何の役にも立たないのかい?」

と、独り言を呟き

ふと答えが見えた気がした。

自然を感じに来たつもりが

気づけば、自然に襲われていた。

どんなに、都会で頑張ったって

自然を前には何の役にも立たなかった。

流されて、最後に信じられるのは

自分自身かもしれない。

と言っても、もう疲れて腕が上がらないが。

「あぁ、なんてポンコツ」

お菓子ばっかり食べていたから…。

ラーメンばっかり食べていたから…。

「ポンコツだな…」

見上げた空がどこか見覚えがある。

「行った人から夏です」

あぁ、あの広告だ。

もしかしたら、作った誰かも

こうして、自然に襲われ

漂流していたのかもしれない。

だとしたら、ボクはやはり答えを見つけられた気がする。

ぶぉぉぉぉおおおぉおぉん。

あぁ、ほらもうきっと

中国の方だ。

「おーい! おーいー」

ほらほら、呼ばれている。

「おい!!!」

ふと、見上げると

おじさんが小さな船に乗っている。

「あ!!!」

と、ボク。

「生きてるか?」

と、おじさん。


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