東京、バイト、初日。

海と街と誰かと、オワリのこと。#21

東京、バイト、初日。

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.02.09

大好きな海を離れ、アーティストになったオワリ。居心地の悪さを感じながら、それでも繰り返されていく毎日のあれこれ。「本当のボクってどんなだっけ?」。しらない街としらない人と。自分さえも見失いかけたオワリの、はじまりの物語。


加藤さんとロイヤルホストに入りランチを注文すると、林さんがやってきた。

林さん「オワリ、お待たせ」

僕「林さん、お久しぶりです。よろしくお願いします」

林さん「うん、よろしく」

林さん「オワリは特に仕事しないからオフィスに来て、好きなようにパソコン触って何か作りな」

僕「何を作りますか?」

林さん「それは、オワリが決めればいいよ。わからない事があれば加藤に聞いて必要なものがあれば俺に言ってね」

僕「うーん、わかりました」

林さん「ぼけっと寝るのだけは無しな。なんでもいいから何か作ってね。それだけ約束」

僕「はい、わかりました」

それから3人でランチを食べて、オフィスへ戻る。林さんが買ってきてくれた椅子は凄く座りやすかった。

加藤さん「オワリ君、とりあえず何か絵を描いてシルクスクリーンの版を作ってみたら?」

僕「シルクスクリーン?」

加藤さん「教えるよ」

隣の部屋には作業部屋があった、沢山の機械や工具が置かれていてなんでも作れそうな部屋だ。アルミのフレームにメッシュを張って、こうやって露光する。流してインクとスキージで…加藤さんがシルクスクリーンの版の作り方を教えてくれた。これは凄い、写真もプリント出来るのか。。

加藤さん「明日は新宿御苑に行って植物の写真を撮っておいで」

僕「どんな写真が必要ですか?」

加藤さん「なんでもいいんだよ、オワリ君の好きなように撮っておいで」

僕「はい、頑張ります!」

林さん「オワリ、ここまでチャリか?」

林さんが書類を持ってやってきた

僕「はい、自転車です」

林さん「了解、朝はバスが沢山通るのとバスに乗る人降りる人、車も多いから気をつけろよ」

僕「はい、わかりました」

林さん「ハンコ持ってきた?」

僕「はい、持ってきました」

ポケットからハンコを取り出して、何枚かの書類にサインとハンコを押した。

林さん「よーし、オワリ。とにかく本気で何か作ってみろ」

林さん「何日、かかってもいいからここで好きなだけ何か作ってな」

僕「はい」

林さん「おし、頑張れ」

東京での初めてのバイトは想像していた斜め上だった。でも、明日がとても楽しみだ。

夕日と一緒に自転車で帰る。途中、肉まん屋さんが目に留まり肉まんを買って食べる。美味しい。。。。!家に帰ってお父さんに電話を掛ける。

僕「もしもし、今日林さんのオフィス行ってきたよ」

父「お、どうだった?」

僕「うーん、何か作れって」

父「作ったらいいじゃん」

僕「うん、」

父「ちょっと待って」

母「もしもーし、バイト行った?」

僕「行ったよ」

母「どうだった?」

僕「何か作れって言われたよ」

母「おー、いいじゃん」

僕「うん、そうね」

母「何か作ったら写真送ってね」

僕「わかったよ」

シャワーを浴びて、新宿御苑の場所を調べる。学芸大学駅から副都心線直通の電車に乗って新宿三丁目駅で降りて歩くようだ。明日はきっと楽しい1日になる。久しぶりにワクワクして眠る。


続く



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