道を歩けばもう春だ

えもーしょん 大人篇 #22

道を歩けばもう春だ

2016~/カイト・大人

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.04.14

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#22
「道を歩けばもう春だ」
(2016~/カイト・大人)

寒暖差で、体調を崩しながらも

毎日、薬を飲みなんとか

騙し騙しやっている。

薬では、どうにもならない物は

恋事情くらいだ。

外は、すっかり

春だと言うのに

ボクには、一向に春が来ない。

朝起きて、今日こそ春が来ると信じ

女の子の事を想い

絵を描き、原稿を書く。

そして、春が来たら

ご飯を作ってあげようと

クックパッドを見ては

ご飯を作り、勉強している。

夜になり、今日も春は来なかった。

と、落ち込み

明日こそは、きっと。

そう願って

眠りにつくのだ。

来ない春を待ち望む日々を繰り返し

淡々と過ぎて行く日々を

遠くから眺めるように生きている。

それに、最近はついてない。

電車の中で、可愛い女の子に

目が合い、ウインクしたら

違う車両へ行ってしまったり

自転車に乗って、桜並木を走っていたら

自撮りしている女の子に見惚れて

電信柱に突っ込んだり

まい泉の散歩中、向こうから歩いてくる

女の子、斜めがけのトートバッグのベルトが

谷間にインしていて、つい見てしまい

うんちを踏んだり

お風呂に入って、のぼせてしまい

バルコニーで、冷ましていると

向かい側のマンションから悲鳴が聞こえ

その後パトカーが、やって来て

露出魔と間違われたり

あげればキリがないが

ボクは、アンラッキーの後は

必ずラッキーが来る事を知っている。

いつだってそうだ。

春が来ないかもしれないが

来ると信じて明日も頑張る。

いつか、好きな人と

「桜が綺麗だね」

そう言って笑いたい。

スーパーへ買い物へ行った君が

「道を歩けばさ、もう春だね」

そう言って

アイスを食べながらテレビを見ている

「食べる?」

と、振り返り

あまりの可愛さに

「え」

と、固まる

「あげない」

と、アイスをパクリ

ボクは鼻血ブーだ。


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