何者かになれるか不安だった

えもーしょん 大人篇 #54

何者かになれるか不安だった

2016~/カイト・大人

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.08.20

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#54
「何者かになれるか不安だった」
(2016~/カイト・大人)

6畳じゃなくて、4畳の部屋で

窓の外で揺れ、隣の部屋にぶつかる

洋服を見ながら、ぼーっとしている。

ふと、小さい頃何になりたかったのか考える

思い出せる中で、1番古いのは

確か、海上保安官の映画を見て憧れた。

カンナー!!!!!!!

と、叫ぶあの肉体美に

ボクは、心を奪われた。

焼けた肌、鍛えあげられたあの体。

そして、その腕に吸い込まれて行く

色白、細身美女。

なんとも、ミスマッチなあの2人に

ボクは心から憧れた。

今思うと、あの頃から

女性のタイプが変わっていない。

あ、初恋はカンナか。

近所の団地に住む

ななみちゃんかと思っていたけど。

カンナか。

テレビの中で輝いている

あの人たちのように、なりたいと

思った事もある。

なんだろう、

認められたいわけでもないけど

チヤホヤされたいわけでもないけど

なんかこう、何かになりたいと

日々、思っているのかもしれない。

何かって、具体的にはわからないけど

自分が、想像できる中で1番輝いている

姿になれれば、それが何者かなのかもしれない。

でも、それはなかなか難しい。

自分自身の、生まれ持った能力で生きていく。

と、決めたボクが

アイドルになって、有名になって

自分の中の輝く自分を超えたとしても

それは、決して

自分自身の生まれ持った能力ではないから

邪道なわけで。

ようは、作りあげられた人物にはなりたくない。

と、いうわがままもボクの中にはある。

けれど、アイドルが嫌いという意味ではなくて

どちらかと言うと、羨ましい。

ボクだって、誰かにメディアや

テレビや映画に出させてもらって

有名にしてもらいたいと思った事もある。

けれど、ボクは自分のダメな部分を知っている。

誰かに何かをしてもらって

いい、場所へ行ってしまうと怠けてしまうのだ。

だから、自分自身で

辛い思いや、苦しい思いをして

自分の行きたい場所と、なりたい自分を

いつだって、追いかけて勝ち取らなければならないと

強く、思っている。

出来れば、優しくいたいし

イケメンでいたいけど

ずっと、それを維持することは

ボクには、難しい。

毎日、毎日、何かしらにキレているが

突然、優しくなったら

「かいと、病気にでもなったの?」

なんて、思われて

みんなを心配させちゃうし。

突然、ボクが髪の毛を伸ばし始めて

ちょっと、そこら辺の

大学生のように、パーマにしちゃったら

もう、大変。

ボクの好きな大人は

みんな、見た目を気にしない。

気にしない。というのは

何もしない。

という事ではなくて

自分の事を理解して、1番綺麗な自分を知っているから

着飾る必要がないのだ。

話がコロコロ変わってしまうけど

何者かになれる日は、いつ来るのか。

なんて、事を考えている時点で

ならないという事を最近知った。

なぜなら、ボクはもうなっているから。

理想の自分ばかり、追いかけていると

前ばかりを見てしまって

つい、追いかけている自分の姿を

見逃してしまう気がする。

追いかける必要はなかった。

立ち止まって、自分を見て

直すところ、褒めるところを

よくみることが、1番大事なんだって

気がついた。

確か、これは中学生くらいに

同じような事を誰かが言っていた。

「大人になったらわかるよ」

と、言っていたけど

ボクも、少し大人になれたのかな。


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