出版社の日常-#8
翻訳絵本を出版する
Photo & Text: TWO VIRGINS
People / 2019.02.20
今回は1月25日刊行した翻訳絵本『パパといっしょ』の本が出来上がるまでをご紹介します。
1年前の年末に営業スタッフがネット記事で、この絵本の原画イラストが紹介された記事を発見したことが今回の企画の始まり。
イラストの雰囲気に一気に惹きこまれた私たちは、次の日にはInstagramを通して作者であるウクライナ人のSoosh(スーシー)さんに直接メッセージを送っていたのでした。
数日後にはスーシーさんの所属事務所(アメリカ)から連絡が。英文メールをムムムっと訳すと、“ちょっと待っててね、また連絡するね〜”と。
数日後に今度は出版社(アメリカ)から連絡があり、その数日後には日本の翻訳出版権の仲介大手、日本ユニ・エージェンシーのご担当者様へ繋いでくださいました。ここまでは意外とスムーズ。
原書を読んで、「これはいい本になるぞ」と意気込みオファーを決定。
翻訳はどなたにお願いしようかと、いろんな絵本の「翻訳者」を見てまわりました。
王道の児童書企画は初めてだったので、ブックデザイナーも実際に本屋さんで気になった装丁の奥付から探しました。
そんなときに、『おかあさんはね』(マイクロマガジン社)という絵本の翻訳に出会ったのです。本当に宝物のような言葉がたくさん詰まった絵本でした。
「この方にお願いしたい!」そう思って依頼させていただいたのが『パパといっしょ』の翻訳を担当してくださった作家・作詞家の高橋久美子さんです。
都内の喫茶店でお会いし、緊張している私たちにとても気さくにお話しをしてくださった高橋さんは、その場で翻訳についても快諾いただけました。
実は私、以前に高橋さんが活動されていた「チャットモンチー」というバンドの曲を、高校生の頃友人がコピバンしていた縁からハマりまくってMDが擦り切れるほど聴いていました。そんな私がこのお仕事をご承諾いただけたうれしさと、13年前の自分自身では想像もつかなかったこの未来に、帰り道に少しだけ泣いたことは秘密です。
翻訳作業は高橋さんからいただいたいくつかの案をもとに、校正を重ねていきました。最後まで悩んだのが、タイトルを「パパ」にするのか「おとうさん」にするのか。
最終的に「パパ」にした理由はいくつかありますが、その一つは“音”でした。
「パパ」という破裂音のほうが子どもたちが口にしやすく、興味を持つ音なんですね。
いつだって絵本の読み手である子どもたちの目線を大切に高橋さんは考えてくださいました。
翻訳が完成した後は、今回のデザインをしてくださったジュン・キドコロ・デザインさんへ。
あがってきたデザインは想像以上に素敵でした! 特に手書きのタイトル文字は店頭で遠くから見てもとても目立つのです。
帯のカラーも絶妙で、児童書の柔らかさもありながら、品があって美しい。すみません、自社本を絶賛しています。笑
デザインが完成した後、いよいよ権利者へ確認します。
海外のやりとりになるので、返答の日数に余裕を持たせ、いざ「問題ないか確認してくださ〜い!」と。
数週間後。……あれ、返事が来ない。
エージェントのご担当者さんに謝りつつ猛プッシュしてもらいます。
焦りがマックスな入稿前日、ついに“Perfect, thanks!”との返事が……。思わず安堵の大きなため息が出ました。
その後はいつもお世話になっている図書印刷株式会社さんへ託します。
色味の細か〜いお願いも丁寧にご対応してくださり、安心しておまかせできる印刷会社さんなのです。
そうして店頭に並んだ本たちを、さらに魅力的に見せてくださるのが書店員の皆さま。
これはヴィレッジヴァンガード三宮店さんのPOP……泣けます。
こうして海外で生まれた1冊の絵本を、日本の皆さまにようやくお届けすることができました。
大切な人がいるすべての人に読んでほしい本当に素敵な絵本です。
たくさんの方々と、大事につくりました。
ぜひ、店頭で見かけたら手にとってみてくださいね。
【書籍情報】
『パパといっしょ』
文・絵:スーシー
訳:高橋久美子
価格:1,500円(+税)
仕様:32頁、226mm×203mm、上製本、オールカラー
ISBN:978-4908406-20-1
《イベント情報》
①『大人のための翻訳ひもとき講座』
・日時:3/20(水) 18:30開場 19:00開始 90分程度
・場所:アクアチッタ(〒770-0941 徳島県徳島市万代町5丁目71-4)
・会費:2,000円(高橋家お手製の柑橘のお菓子&野草茶付)
会場にてお支払いください。
・申し込み方法:
■メールの場合→高橋久美子さんHP「んふふのふ」内の「ご用命」から、名前、アドレス、タイトル〈翻訳ひもとき講座〉、内容に〈人数、お名前、電話番号〉を書きご送信ください。
*注意:迷惑メール拒否設定になっている方は必ず設定を変更して送ってください。こちらからのメールが3日以内に返って来ない場合は下記の電話番号で受付ください。
■電話の場合→アクアチッタにお電話ください
088-679-8001 担当:岡部さん
②『パパといっしょ』『ディアガール おんなのこたちへ』発売記念
トークショー&ワークショップ
・日時:3/21(木・祝) 14:00~
・場所:平惣 徳島店
・申し込み方法:入場無料
お申し込みは店内カウンターまたはお電話にて
★終了後、サイン会も開催予定です。
・お問い合わせ先:平惣 徳島店 088-622-0001(代表)
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TWO VIRGINS
2015年設立の出版社。皆さまのライフスタイルにちょこっと混ぜていただきたい出版社をコンセプトに書籍刊行を続ける。anna magzineのスピンオフ企画「anna books」シリーズや「THE AMERICAN VINTAGE FURNITURE」などContainerを手掛けるMo-Greenと企画を共にした書籍も多い。主に出版にまつわる記事を紹介していきます。