ウッドデッキで遭難

えもーしょん 中学生篇 #58

ウッドデッキで遭難

2010〜2013/カイト・中学生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.10.28

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#58
「ウッドデッキで遭難」
(2010〜2013/カイト・中学生)

ある日、教室で無人島へ行きたい。と

友人のノリスケが言った、彼は「ボクも行きたい」なんて

一言も言っていないボクも連れて行く前提で話を進めていた。

「無人島に行くのにウケを狙って変なのを持って行くから失敗するんだよ」

と、きっと昨晩テレビで放送していた無人島対決的なものを見たのだろう。

残念だけど、ボクは見ていないので彼の話にはまったくついていけない。

そもそもこの辺に無人島なんかないし

あったとしても、ボクらの自転車では行けるはずがない。

彼にそう伝えると、「擬似体験でいい」とちょっと大人っぽいことを言った。

「どこで」

「公園とか」

「テント張って?」

「そうそう、魚とか焼いちゃって」

「怒られるよ」

「誰に」

「近所の人に」

「半径50M以内は無人島です。って看板立てるよ」

「本当にやるの?」

「やるよ」

「やりたいの?」

「やりたいよ!?」

と、結局ボクらは家にあるガラクタを集め

なんとかそれっぽくなるように頑張った。

夜になって、ボクの家のインターホンが鳴った。

「こんな時間にどこ行くの?」

と、ママ。

「公園で無人島体験するんだって」

「誰と?」

「ノリスケだよ」

「寒くて死んじゃうからウッドデッキでやりなよ」

「確かに」

家の前で待つノリスケに公園じゃないとダメなのか尋ねた。

彼は別にどこでもいいらしい。

というわけで、ボクの家のウッドデッキに夜な夜な

テントを貼り、慣れないガスボンベのコンロでお湯を沸かし

1日目のご飯はカップラーメンを食べた。

2日目、無人島体験の噂が流れ同級生が見にきた。

「おー! やる?」と同級生に会いに行こうとすると

「ここからでちゃダメだよ!」とノリスケが必死に止めた。

どうやら、ウッドデッキはあくまでも島らしい。

ちょっと本気のノリスケを見た同級生はなんだかボクらが楽しそうに見えたのか

ニコニコして家に帰った。

数時間後、テントの中で漫画を読んでいると

家の電話が鳴りママが子機を持ってやってきた。

相手は、さっきの同級生だった。

「おれさーいまアジアなう」

「わけでわかんないこと言うなよー」

「違うよ、おれもやってんの」

「なにを?」

「無人島だよ、無人島!!」

「はぁ!? 1人で?」

「そうだよ、ソロプレイだよ」

「まじか…ノリスケに変わるわ」

と、ノリスケに変わった。

次の日、それを聞いた他の同級生がやってきた。

続く


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