スケートパークの回数券

えもーしょん 小学生篇 #36

スケートパークの回数券

2003〜2010/カイト・小学生

Contributed by Kaito Fukui

People / jun.15.2020

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#36
「スケートパークの回数券」
(2003〜2010/カイト・小学生)

ボクの家は、海のすぐ目の前だった。

家の前の道をまっすぐ

だいたい、1分も歩けば

134号線に出てしまう。

134を陸橋で渡るか、車の合間を見て

そのまま、渡るかしてしまえば

本当に、すぐ目の前だった。

海の目の前に住んでいるからって

サーフィンする事が必然かと言うと

そうでもない。

サーフィンを始めたと言えるのは

小学2年生の事だった。

それまでは、家にあった

スケートボードに乗って

家の周りのウッドデッキををグルグル

回る日々。

チクタクが、いつから出来たのかは

もう、思い出す事が出来ない。

海の目の前に住んでいるのに

スケートボードに夢中な

小学生1年生のボクは

わざわざ、自転車で

20分ほどかかる

スケートパークまで毎日通っていた。

しかも、海に入るのには無料なのに

スケートパークは、100円の入場料がかかるのだ。

「はい、今週分ね」

と、毎週月曜日の朝に

ママが、スケートパークの入場料券分と

水筒のジュースがなくなった時用の

非常時の分を多めにくれた。

お小遣い制ではないボクの家の

唯一の、お小遣い的なものがあったのは

これだけだ。

そんなある日、いつものように

スケートパークへ自転車で向かい

入り口で、入場料を買おうとしていると

受付のおばちゃん(本業は着物教室の先生)が

「いつも、チケット買っているけどこっちの回数券を買った方がお得よ」

と、言ってきた。

ボクは、これが勧誘か! もしくはセールスか!

と、ついに! ボクも!

嬉しい気持ちになったが

ママにそんな時は

「結構です」

と、はっきり断りなさいと言われていたので

そのまま

「結構です」

と、ボク。

「あら、そう?」

「回数券を買うと、ステッカーがついてくるのよ」

と、おばちゃんのセールストークは終わらなかった。

ステッカーなんて…。

と、思い見向きもせず

財布から、お金を取り出そうとしていると

ふと、横目におばちゃんが持っている。

ステッカーが目に入る。

なんと!

スケートパークの看板の

よくわからない、男の子の

キャラクターのステッカーだったのだ。

「はっ!」

と、思わず声が出てしまったボクを

おばちゃんは見逃さなかった。

「回数券を買うとね、1回分無料なのよ」

「だから、その分あそこでお菓子買えるよ」

と、ボクの憧れ

お菓子の自動販売機を指さした。

スケートパーク内にある

お菓子の自動販売機は

ボクの大好きな

チョコチップメロンパンはもちろん

柿ピーや、アルフォート的なチョコが売っているのだ。

少し割高な為、ボクはいつも買えなかった。

「な、なんと…」

と、おばちゃんは

勝ち誇った顔でボクを見る。

この時点で、もうボクには

「結構です」なんて

言える思考がなかった。

それよりも、どう買うか。

が、問題だ。

回数券は900円

ボクの財布にはぴったり1000円

回数券を買ってしまうと、残り

100円しか残らないのだ。

こうなると、今まで

週6日、スケートパークへ行き

600円の入場料を支払い

残りの400円のお小遣いがなくなってしまう。

残りの、400円は大きい。

なぜなら、チョコチップメロンパン

4つ分だからだ。

チョコチップメロンパン4つとは

2日に1回の幸せを意味する。

回数券を買うと、これがなくなる為

なんと、7日に1回。

これは、ボクにとって大問題なのだ。

7日に1回のチョコチップメロンパン

いつ、どのタイミングで食べる事が

1番ベストなのか

そもそも、7日に1回を

我慢できるのか。

ボクは、必死に考えた。

回数券を買っても

来週、100円しか浮かない?

ん?

どうやって計算すればいいの?

と、苦手な算数を

身近に感じてしまい、なんだか

嫌な気持ちになり

そして、結局

回数券は買わなかった。

ボクと、スケートパークの回数券。

ある日、友達のランドセルに

スケートパークの看板のキャラクターの

ステッカーが貼ってあった。

買わなくてよかった…。


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