愛

Contributed by Kaito Fukui

People / oct.09.2020

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#55
「愛」
(2013〜2016/カイト・高校生)

愛なんてものは、信じていても自分次第では

どうにでもなってしまうものだ。

高校生になってから、いったい何人の女の子に

「愛してるよ」とベットで囁いたことか。

正直、高校2年生のボクの「愛してるよ」にはもう

なんの意味もなかった。ただの「愛してるよ」だった。

そして、ボクは今日もこの回転するベットの上で

「愛してるよ」とささやく。

彼女の「うん、私も」の言葉よりも先に

ボクの頭には、「あ、今日でポイント貯まった」と

ラブホテルのポイントカードが気になった。

当然、彼女の「うん、私も」は耳に入ってこない。

だから毎回「ねぇ、愛してる?」でハッとする

「もちろん、愛してるよ」なんて言うけど

10ポイントも溜まった、ポイントカードが気になった。

3日後、昨日付き合った彼女と

10ポイント貯まったポイントカードがを持って

いつものラブホテルへ向かった。

前を歩く、1組のカップル

立ち並ぶ、ホテルを見上げては料金表を横目に歩いている。

その姿に、なんだか懐かしさを感じた。

ボクも10ポイント前まではきっとあんな姿だったのだろう。

入り口前で、キョロキョロする2人がなんだか羨ましい。

「どこに行くの?」

昨日付き合った彼女が言った。

「回転ベット行かない?」

「えーーーーーー鏡がいいー」

予想していた斜め上の返事だった。

「か、鏡ってなに!?」

「え? 行ったことないの?」

「ない、ない」

「私、ポイント貯まってるから行こー」

ボクは、思わず立ち止まった。

彼女は純粋で、ラブホテルなんて初めてだと思っていたからだ。

回転するベットを初めて見る彼女の姿を楽しみにしていたのに

まさか、回転ベットはもう飽きたなんて

そして、なんだよ鏡って。

ボクは知らぬ間に立場が逆転していることに気がついた。

鏡に囲まれた、部屋を見てびっくりするのはボクの方だった…。

なんてこった。

しかも、ホテルは隣じゃないか!!!!!

もう、ここまで来ると

どうしても回転ベットに行きたい。

それは、彼女も同じだった。

そこでボクたちはジャンケンすることにした。

勝ったら、勝った方に行く

あいこたっだら、別々に行く。と意地の張り合いの末

意味のわからないことになった。

そして、神様は意地悪だった。

そう、一発目であいこだったのだ。

「え? マジ?」とお互い心の中で思ったものの

もう、行くしかない。

そして、ボクらはそれぞれ貯まったポイントカードでホテルに入った。

2時間後、ホテルの前で彼女は待っていた。

「私たち、ダメみたいね」

「そうだね」

相手に対する失望よりも

ポイントカードが無駄になった方がボクらはショックだった。

これ以来、ボクはラブホテルへ行っていない。

ポイントカードを思い出してしまうから。

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