Hayato Tobayama Interview
アーティスト・外波山颯斗 インタビュー
Contributed by anna magazine
People / 2022.12.14
––外波山さんが油絵を描き始めたきっかけはなんだったんですか?
大学に入る前までは漫画やイラストなど線で描かれたものに興味があったんですけど、美術系の予備校で日本画を学んだり、粘土を使った創作をしたり、色々トライしてみた中で油絵が一番肌に合ったんです。なんでも表現できるそんな予感がしました。油絵なら自分の思い描いているものを一番上手く可視化できる。そういう感覚でしたね。
––絵の特徴をご自身ではどういう風に思われていますか?
予備校に通っていた頃から、何かを描くんじゃなくて、どう描くかみたいなところにずっと興味がありました。大学に入学してからも何かモチーフを描くよりも、絵の具のタッチとかそういうところに面白みを感じて創作を続けています。今はこういうベタッとしたペンキみたいな不透明な絵の具で描いているものが多いんですけど、少し前までは下の層が透けて見えるような透明色を基調とした感じで描いていました。その時は下の層を活かすことにすごい興味があったんですけど、今は反対に“隠す”ことに面白さを感じています。描いた部分をいかに隠すか、みたいな。ここら辺を隠したら面白いかなとか、ここに不透明なベタッとした色を置いたら面白いかなみたいな、そういうところから筆を進めていくことが多い気がします。この絵の具の下にはもともと描いていたものがあるんですが、時間が経つと自分でも何を描いていたかわからなくなってしまうんです。キャンバスの側面を見ると何色を使っていたのか見えて、完成したものと全然違う印象の絵の具が垂れてたりすると、こんな色使っていたんだなと思うこともよくあります。何を描いてたか分からなくなるそんな感覚が、ちょっと面白いんです。
最近、作品を描いていて完成形って一つじゃないのではってことをよく思うんです。完成形は何個かあって、そのうちの一つにとりあえず着地してて、一旦展示が終わった後に家に持って帰ったら多分さらに加筆しちゃうだろうなって。それができちゃうというか、それでいいのかなって思うんです。それがいいことなのか悪いのかまだ分かんないですけど。
––作品を描く際に大きなテーマとしているものはありますか?
自分の場合は、何かテーマを持って描いているものがあるというよりは、描いてからテーマが定まってくる感じですね。展覧会の作品がまとまり始めて、タイトルを決めた時からだんだんと焦点が合ってくるんです。なので明確に「僕が描き続けているテーマはこれです」という風にはまだ言えるものがなくて、まだ手探り中ですね。
––創作のインスピレーションはどのようなところから受けていますか?
他のアーティストの作品を見ることが一番勉強になりますね。作品を見て、その人の視点みたいなものが浮かび上がってくると、ぐっとくるというか、そこから刺激を受けることが多いです。規模の大きくないギャラリーの展示だとアーティストが在廊していることも多く、最近はアーティスト本人に話を聞いてみるようにしています。最近注目している作家は、ロイス・ドッド(Lois dodd)という外国のペインターです。風景を描いてるんですけど、風景だけで収まってない。描きたいものは別のところにあるんだろうなっていうのがすごいわかるんです。実物をまだ見たことないんですけど、ずっとホームページとかで作品を見ていますね。
––同世代のアーティストも気になる存在だったりされますか?
同世代の活動は気になりますね。20代前半のアーティストの活躍はとても刺激になっています。すでに作家として活動されている方も多く、同世代のムードで感じるのは流れがすごい早いということ。SNSをはじめとした情報の早さ、時代の流れが早い中で育ってきたからかもしれません。こういう時代にあって、なんでもわかりやすいものが好まれているように個人的には感じています。広告などを見ていてもわかりやすいものが多い。ただ、そういうものと僕がやっていることはちょっと合わないというか、そういったわかりやすさと自分の作品は別のところにあっていいものだと思っているんです。一見しただけではわからない、余白の部分がアートの魅力だと思うんです。なので、見る人に何でもわかるようにはしない。ちょっと意地悪というか、そういう部分を気にかけているところはあります。実際、僕自身も自分の絵でわからないことはたくさんあります。それくらいでいいんじゃないかって思いつつ描いてますね。どう思うかは受け手の人に委ねる、放り投げるぐらいの気持ちで。
最近気づいたことなんですけど、自分の絵を説明するときに抽象的な絵ってついつい言ってしまっていたんです。それもわかりやすく伝えようとしていたんでしょうね。でも、抽象的な絵ではあるけど、自分の感覚としては抽象画ではないなっていうことに最近気がついて、自分からは抽象画と紹介しないようになりました。
––創作中に気をつけていることはありますか?
最近気をつけているのは創作中に音楽を聴かないということ。音楽を聴きながらだとなんか絵がすごくいい感じに見えてきちゃって。特に洋楽のいい雰囲気の曲だと、この作品はこれでいいんだっていう油断が入ってきちゃうんです。リラックスするのはすごい良いことなんですけど、作品が完成してもどこかその音楽の感じが入ってきちゃう感じがするんです。あの時に聴いてたあの音楽の感じだなって、自分はそう見えてしまっているけど見てる人はそれを分かる余地もないから、良くないなと思っています。
創作している時にいいなと思うのは、描いていて、雑念が頭をよぎったりする時とか。結構大事だと思っているんです。全然関係ない、昔のどうでもいいことが頭によぎったり、そういうことが多くて。その雑念から描いた一筆が意外と効果的だったりして、それがすごいいいなって思うんですよね。
––最近、外波山さんが興味を持っていることはありますか?
最近は、言葉に興味がありますね。言い間違いとか、すごい面白いなって思って。抽象的な言い方なんですけど。言い間違い、アクシデント的なものがおかしいって思うんですよね。割と作品づくりにも似たような部分があって、「あ、絵の具付いちゃった」みたいな。アクシデントの跡をどう残すか、丸ごと消すのか、拭うのか、色々そういうところで意外と密接なのかなって思うんです。自分のコントロールできない部分が作品に現れるのを面白がっているのかもしれません。
––今回の展示「プレーン」はどういった展示でしょうか?
はじめに話したように、自分はあまり一貫したテーマが無くて、絵を描くことでどうなるのかに興味があるんです。展示も普段の生活の途中経過じゃないけど、ターニングポイント的な感じで作品を発表する機会という感じでやっています。展示のために作品を集めてみて、今回はこんなタイトルなのかなって考え始めて、やっと一貫性みたいなものが出てくるんです。例えば、今回の展覧会タイトルが「プレーン」なんですけど、プレーンっていうのは英語だと、planeとplainの二つあって、その中でもさらに色んな意味があって、そこで色々な着想を得て、特にplainの方が特に意味がズラーっといっぱいあって、その訳語のどれも結構自分の制作にあてはまる、というか あ、いい言葉だなみたいな言葉が多くて、そっからこうだんだん方向性がわかってきた感じです。
今回の展示ステートメントで自分が書いた文章は裏テーマがあって、プレーン(planeとplain)を英語から日本語に訳したときの意味、例えば明らかとか易しいとか色んな言葉をちょっとずつ散りばめてみるとか、あとプレーンには飛行機という意味もあるんですけど、文章自体をぼんやり飛行機から眺めているみたいな、飛行機から下を見下ろしているみたいな、明確に何か見えないけど、何かあるなみたいな、ここはなんとなく山かな、人?車?みたいなそんな感じの設定で書いたんです。気付く人はいなくてもいいので試みとして面白いかなと思い書いてみました。
展示の特徴としては、会場のMONO.LOGUESがコンクリートの締まった空間で、窓はあるけど閉じられた感じの場所なので、風景っぽいものを置いてみたりしました。今までこういうわかりやすく風景っていうのはあんまり出してこなかったんですけど、この会場だからこそ、ちょっと外に出ていくような絵を出してみようかなっていう感じはありました。
展示に訪れる方にはゆっくり見てほしいですね。そんなにヒントとか、すごいゆっくり見ても多分なるほどねっていう風にちゃんと腑に落ちることはないかもしれないですが、でもそれで良くて、じっくり見てほしいなと思っています。
<プロフィール>
外波山颯斗(とばやま・はやと)
2001年生まれ
2022年多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻在学
俯瞰的に画面を捉えつつも、日常の出来事や体調、手癖から生まれる感覚を基に、絵を眺めては描きを繰り返して制作している。
Instagram @hayatotobayama
<展示情報>
「プレーン」
会場:MONO.LOGUES(東京都中野区中野5-30-16 メゾン小林101)
HP https://www.monologues.jp
Instagram @mono.logues_
会期:
2022年11月25日(金)〜12月19日(月)
月&金 13:00-18:00 | 土&日 12:00-17:00
クローズ:火・水・木
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anna magazine
「anna magazine」は、ファッションからライフスタイルまで、ビーチを愛する女の子のためのカルチャーマガジン。そして、「anna magazine」はいつでも旅をしています。見知らぬ場所へ行く本当の面白さを、驚きや感動を求めるたくさんの女の子たちに伝えるために。