ゆるい日々

海と街と誰かと、オワリのこと。#19

ゆるい日々

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.02.07

大好きな海を離れ、アーティストになったオワリ。居心地の悪さを感じながら、それでも繰り返されていく毎日のあれこれ。「本当のボクってどんなだっけ?」。しらない街としらない人と。自分さえも見失いかけたオワリの、はじまりの物語。


引越しが落ち着いて、1人暮らしを満喫している。眠くなったら昼でも朝でも夕方でも起きるまで眠り、起きたら眠くなるまで漫画を読む日々。好きなおやつは食べ放題、コーラも飲み放題。気が向いたら駅の方へ散歩して、最近見つけた柚子がたくさん乗っているラーメンを食べる。そんな日々が2週間ほど続いた。

ーー時間にも縛られず、制限のない暮らし。これが1人暮らしの醍醐味?

しかし、なぜだろうか。この自由な時間がずっと続いたらいい、と望まない気持ちがある。いちご狩りへ行ってしばらくいちごを食べる気分にならないような、そんな気持ち。来週から始まるバイトまでの時間がとても長く感じる、不思議だ。

ーー1週間後

小さい頃からの知り合いのデザイン会社で今日からバイトをさせてもらう。時給は1,500円やっぱり東京のバイトは時給がいいな。朝9時から夕方5時までパソコンは使えるけれど、デザインはしたことがないからちゃんと働くことが出来るか少し心配。

オフィスは自転車で10分くらいの場所にある。家を出て目黒通りを真っ直ぐ目黒駅へ向かって走る。
海の方にはなかった、自転車専用?レーンを爆走。東京タワーが見えて春の柔らかい風がとても心地良い。教えてもらった住所は、ロイヤルホストの隣のビルだった。ランチにハンバーグを食べられるのは嬉しいな。

ビルのエレベーターに乗って、4階のオフィスへ向かう。エレベーターのドアが開くと、小さな電話が置いてあった。使っていいかわからないので携帯で電話を掛ける。

僕「もしもし、おはようございます。オワリです」

林さん「もしもーし、おはよう、着いた?」

僕「はい、エレベーターの前にいます」

林さん「早いな、ちょっとそこで待っててね」

僕「はい、わかりました。ありがとうございます。」

電話を切って2分ほどすると、オフィスのドアが開いた。


続く



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