彼女のマンション

海と街と誰かと、オワリのこと。#33

彼女のマンション

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.03.02

大好きな海を離れ、アーティストになったオワリ。居心地の悪さを感じながら、それでも繰り返されていく毎日のあれこれ。「本当のボクってどんなだっけ?」。しらない街としらない人と。自分さえも見失いかけたオワリの、はじまりの物語。


学芸大学から少し歩くと、お洒落なマンションに到着した。まさかと思ったがここがさきの住むマンションらしい。アベンジャーズが住んでいそうなマンションのオートロックのドアを過ぎるともう2回ドアを過ぎてやっとエレベーターに乗った。

最上階のさきの部屋はすごく広く、景色もとても綺麗だ。遠くにスカイツリーと東京タワーが重なって見えた。

さき「オワリ、私作ってる間にお風呂入る?」

さきがスウェットの上下とタオルを持って言った。ここまで準備してもらって断れないので「ありがとう」と伝えシャワーを浴びる。シャンプーと石鹸が沢山あってどれを使っていいのかわからない。。。。シャンプーと書いてあるボトルが2つあったので1つを体用に使ってもう1つを髪の毛用に使った。どちらもさきのいい匂いがしたので多分間違いではないと思うけれど、ボディソープは他にある気がした。

僕「さき、ありがとう」

さき「はやっ!」

僕「普段、シャワーーだけなんだよね」

さき「そうなの?疲れたらいつでも入ってね」

僕「うん、ありがとう」

さきが何かをオーブンに入れてこちらにやってくる。

さき「これがテレビのリモコンで、こっちがNetflixのリモコン」

僕「ありがとう」

さき「うん、私もシャワー浴びてくるね」

僕「わかった、ゆっくりね」

さき「はぁい」

さきがシャワーを浴びている間にネットフリクスを開く。彼女のマイリストを見るつもりはなかったけれど、上に出てきてしまいちょうど僕も見ていたF1のドキュメンタリーを見る。

僕「やっぱベンツは強いなぁ」

しばらくすると、ドライヤーの音が聞こえた。

さき「お待たせ」

お風呂から出たさきは、文句なしに可愛かった。それはそれはとんでもなく可愛かった。頭にタオルを巻いた彼女がオーブンから何かを取り出した。

さき「よし、できたよ〜」

僕「ありがとう」

さきはラザニアを作ってくれた。

僕「これいま作ったの!?」

さき「ううん、昨日の夜に途中まで作ってたの」

僕「そうなんだ、凄い美味しいよ」

さき「よかった」

2人でF1のドキュメンタリーを見ながらラザニアを食べた。夜も遅くなり家が近いとはいえそろそろ帰ろうと思った。

僕「そろそろ帰るよ」

さき「そう?泊まっても全然いいよ」

僕「明日バイトだから」

さき「私、明日朝から撮影だから起こすよ?」

僕「そうなの?何時に家出る?」

さき「7時に家出るよ」

僕「うーん、ちょうどいいな」

さき「じゃ、泊まっていきなよ」

僕「そうしようかな」

さき「うん、朝ごはんも作るよ」

僕「ありがとう」

この夜僕は少し東京の男になった気がした。


続く



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