えもーしょん 高校生篇 #15
伝説のジェダイ
2013〜2016/カイト・高校生
Contributed by Kaito Fukui
People / 2020.02.14
小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!
#15
「伝説のジェダイ」
(2013〜2016/カイト・高校生)
「スクラッチを1つください」
「はい、スクラッチですね」
「お選びください」
と、おばちゃんは
何枚かのスクラッチを広げ
ケンは上から手をかざし
選んでいた。
「これで」
と、10秒ほどで
真ん中あたりの
スクラッチを選んだ。
ボクは、ただ
ボーーーッと見ていた。
少し端に寄り
10円玉で、削っていく
彼は、スクラッチの購入から
選び、削るまで
流れるように
スムーズに動いていた。
後ろで、ただ
ボーーーッと、彼を景色のように
見ていると
「かいと、ほら」
と、ケンが
ボクに何かを見せていた
「あ、ごめんごめん」
と、向かうと
「まじか!!!!!!」
本当にびっくりしかない。
そう、彼は
やったのだ。
当てたのだ。
もう、彼を疑う余地はない。
正真正銘のジェダイだ。
「ケン、ごめん」
「おれ、疑ってしまった。」
「こんな、おれでも使えるかな。フォース」
ケンは、神々しくこう言った
「かいと、フォースと共にあらんことを」
!!!!!!!!!!!!
この日から、始まった。
彼は、ボクの友達から
師匠に変わり
ボクは、彼を
「マスター」と呼ぶ事になった。
次の日、朝7時に電話が鳴った
3コール以内に、電話に出ると
「やぁ、おはよう」
マスターからだ。
「おはようこざいます、マスター」
「今日、1日でフォースを感じるようにする」
「1日で、ですか!!!」
「10:00に原宿駅集合だ」
「はい!!!」
電話を切った後
少し寝て
お風呂に入り
ご飯を食べ
ジャージに着替えて
向かった。
9:45
マスターよりも先に。と
早めに向かうと、そこには
もういた。
「早かったね」
と、マスター
「お待たせしました」
「さぁ、行こう」
そう、言って
公園へ向かった。
芝生の広場に着くと
「座りたまえ」
と、マスター
あぐらで、瞑想のポーズをする
「まずは、感じるんだ」
「風の音、葉っぱが揺れる音、人々の足音、話し声、鳥の声、虫が飛ぶ音、全てに
意識を集中させるんだ」
「かいと、それだけだ」
マスターはそう言って
学校へ向かった…。
ボクは、それから
来る日も、来る日も
公園の芝生で
フォースを感じようと
必死になっていた。
座りすぎて
お尻に、芝生の跡が残ってしまうほどに…
1週間が過ぎて
マスターと、久しぶりに
修行をする事になった。
マスター曰く、そこそこ
感じられるように、なっているらしい。
「よし、一度試験だ」
「売り場へ行こう」
マスターに、そう言われ
2人で、売り場へ向かう。
「こんにちは」
と、売り場のおばちゃんへ挨拶
「スクラッチください」
「スクラッチですね」
「お選びください。」
そう、言うと
おばちゃんは、何枚かのスクラッチを
並べた。
ボクは、上から
何かを感じるように
選んだ。
「ありがとうございます」
と、笑顔でおばちゃん
端に寄り、10円玉で削る
まずは1つ
2つ、3つ。
すると、
「おぉぉぉぉぉ!!!」
なんと、¥200
当たったのだ!
「ふむ、やはりな。」
と、嬉しそうなマスター。
「このまま続けたまえ」
「マスターも、ちょっとやってよ」
と、ボクがそう言うと
「スクラッチください」
と、マスター
1つ、選び戻って来た。
スクラッチを削る。
「ん?????」
「今日は違うみたいだ」
と、マスター。
まぁ、そういう時もあるか。
そう思い、二人で帰路に就く
家でも、コソ練していたボクは
ふと、思ってしまったのだ
「あれ、そもそも宝クジ当てる理由がない」
シュンと、ボクの中で何かが
消えてしまった…
それからというものの
フォースは感じられるが
宝クジ売り場へは行っていない…。
1ヶ月後
マスターに会った。
彼は、なんと
そこそこの打率で当たり始めているらしい。
しかし
彼から、思わぬ言葉が
飛んできた。
「かいと、おれ退学するんだ」
「えええええ!???」
「何するの!?」
「内緒だ」
「まじか…」
彼は、きっと
何かを見たのだろう
見てはいけない、夢を
覚めることのない、夢を
こうなると、愛しか救えるものはない
女に溺れ、夢中になり
ギャンブルという幻想から
セックスという幻想へ
切り替えるしか、きっとない。
まさに、伝説のジェダイだ。
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Kaito Fukui
1997年 東京都出身 幼少期から波と戯れ、サーフィン、スケートボード、恋に青春。 あの時、あの頃の機微を紡ぐように幾層ものレイヤー重ね描き、未来を視る。 美化されたり、湾曲、誇張される記憶を優しく繊細な浮遊感で!