ロースタリーオーナー・山本 酉ものがたり。(後編)

Contributed by LUKE magazine

People / jul.16.2019


さまざまな人の歴史を切り取り物語にする「YOUNG GUNS」。
第3回目となる今回は、
コーヒーロースタリーオーナー・山本 酉(やまもと・ゆう)さんのストーリーをクローズアップ。
後編は、物語のベースとなったインタビューの内容をお届けします。


––昔からコーヒーは好きだったんですか?
小さいころから飲んではいたんですけど、「好き」というわけでもなかったです。なんとなく飲んでいるだけで、小学生のときはクリームを目一杯入れたりして……(笑)。初めてエスプレッソを飲んだのは大学生の頃でした。すごく少ないし、苦いし「2度と飲むものか!」と思っていたんですけどね。

––「Single O」のエスプレッソは違いましたか?
当時の「Single O」には、業界ですごく有名な日本人のバリスタがいました。彼に作ってもらった一杯は、今まで飲んでいたコーヒーとは比べものにならないくらいとてもおいしかった。今思えば、その一杯が現在の仕事に繋がるきっかけだったと思います。この味のコーヒーを自分でも作りたい! と思うようになっていました。最初は「Single O」で皿洗い中心の仕事をしていたのですが、業務が終わった後にコーヒー作りを練習するようになりました。

––世界一周の旅がきっかけで「Single O」と出会えたと思うのですが、もともと旅に出るきっかけは、何だったんですか?
妻から誘われました。「世界一周してみない?」と。その頃、不動産会社に勤めていたのですが「ずっと続けたい!」という意思があったわけでもないので、その誘いに応じました。

––旅のプランやルールみたいなものはありましたか?
できるだけ陸路で移動する。ということを決めていました。アジアから入ってアフリカへ行き、ヨーロッパへ。そして南米、中米と渡って、最後のオーストラリアでは、現地で仕事を見つけて1年間くらい暮らしてみよう、という話をしていました。そのため、出発前にオーストラリアのワークキングホリデービザを取得していました。だけど、エジプトにいたときに旅を続けるお金が足りなくなったんですよね……。

––それで予定より早くオーストラリアに行ったんですね。
そういう想定外のことって、旅の過酷なところでもあり、魅力でもありまよね。ヨガの聖地と呼ばれているインドのリシケシュでは、40度の高熱がでて死にかけました(笑)。その時は、妻が日本の保険会社に問い合わせてくれて、現地の医者が軽自動車で助けに来てくれました。その車で病院に行って、「これ、ベッド?」という感じの硬いベッドで1日8時間ずつ、2日間点滴を打って治しました。深夜バスでバックパックの底をカットされていたり、アフリカで確実に誰かに付けられている、狙われていると感じたり、その他にもいろいろありましたね。でも、その経験が僕と妻の絆を一層強くしたのかなと思います。怖い経験もしたのですが、自分をより客観視できるようになったし、いろいろ得るものはあったと感じています。

––それに、オーストラリアに行ったからこそ、今の仕事と出会うこともできたわけですもんね。
最初はロースターやカフェで働くつもりはなかったです。1年間、なんとなくオーストラリアで仕事と遊びと勉強をしようと思っていただけなんで、職種はなんでもよかったんです。現地で知り合った人に「Single O」の仕事を紹介してもらって、気づけばその仕事にのめり込んでいました。コーヒーのことも詳しくないし、「Single O」が有名なお店ということも全く知らなかったので、最初は「なんで毎日こんなに忙しいの?」と思っていました(笑)。

––どういう経緯があって、その「Single O」を日本で開業しようと思ったのですか?
このおいしいエスプレッソを日本の人にも飲んでもらいたい! オーストラリアのコーヒー文化を日本にも取り入れたい!と思ったからです。その頃はまだ、日本にはコーヒーにこだわっているカフェが少なかった。それに、オーストラリアと同じように、コミュニティの場となるようなカフェを作ってみたかったんです。

––山本さんがその提案をしたとき「Single O」の代表の方はどんな反応でしたか?
「カフェだけの営業ではなくて、焙煎からやらないと意味がない!」と言われました。それからは、現地のクオリティコントロールチームに入って、焙煎の仕方やカッピング(ちゃんと味が出ているかの判断)について勉強し「Single O JAPAN」の開業に向けて準備を進めました。そして、2014年に日本で開業。当初は妻と二人だけで運営していました。今では7人の従業員と一緒にテイスティングバー(土・日・月のみ)なども同じ場所で開き、地元の方だけでなく、遠方からもお客様がいらっしゃるようになりました。「おいしかった」ともう一度来店してもらえるとすごく嬉しいですね。

––今後の目標について教えてください。
僕たちが焙煎しているようなコーヒーを、もっと多くの人に広めていきたいです。知らず知らずのうちに、おいしいコーヒー(スペシャリティコーヒー)と巡り会っているような環境を作っていきたいです。また、「Single O JAPAN」が架け橋となって、オーストラリアと日本がより濃密な関係になれば嬉しいです。「Single O」のボスは口癖で「MAKE IT HAPPEN!」とよく言います。「なんとかしなさい!」とか「やりなさい!」という意味の言葉なんですが、その言葉に全てが凝縮されている気がするんです。自分たちが“いい”とか“やりたい”と思ったことに、自らの手でどんどん挑戦していく。そのためにも、いろんなプロジェクトに参加して、コーヒー業界をもっともっと盛り上げていきたいですね。









profile
山本 酉(やまもと・ゆう)/ SINGLE O JAPAN代表 SCA/CQI認定Qグレーダー。2014年にディレクターとして、SINGLE O JAPANをオーストラリア・シドニーから日本に上陸させた。本国で使用している型と同じヴィンテージの焙煎機、 プロバットロースターUG22を使用し、 独自のルートで仕入れた日本ではなかなか目にする機会の少ないコーヒー豆の卸しと販売をしている。2017年には「Tasting Bar」としてコーヒー豆の小売りと、焙煎したてのフレッシュなコーヒーを十二分に楽しめる魅力的な空間がオープン。
http://singleo.jp/

 

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