THE AMERICAN VINTAGE FURNITURE / UNKNOWN STORY-#6
ACME Furnitureが厳選する
名作チェア4選
Photo & Text : ACME Furniture
People / 2019.02.22
昨年出版された『THE AMERICAN VINTAGE FURNITURE』は、そんなACME Furnitureがこれまでに買い付けてきたアイテムがずらりと並んだブランドの歴史を感じることができる一冊だ。
この連載では本誌では語られなかった、アイテムのバックストーリーを紹介していく。
第六回目は、ACME Furnitureが出合った名作チェアをご紹介。
アメリカには名作と呼ばれるチェアが多数存在している。その中でも私たちACME Furnitureが特に重宝しているチェアを紹介しよう。
#01 GUNLOCKE CHAIR
100年以上の歴史を持つ現存するチェアメーカーである「ガンロック・チェア」。創業時は主にオフィスや公共施設で使うコントラクト用チェアの生産を行った。世界大戦の時代を背景に急速な成長を遂げ、主に政府機関や軍事施設に多く採用されたことによりメーカーとしての威信を高めるようになった。特にデスクチェアのクオリティは高く、実際にホワイトハウス内でも使われ、第35代大統領ジョン・F・ケネディも同社のチェアに座り国家の重要事項の決定を下していたという。写真で紹介しているデスクチェアはヴィンテージ市場で稀に見つけることができるタイプだが、同社の中でも特に座り心地が優れており、座ると身体全体をしっかりと支えてくれる設計になっている。軽くて高機能が求められる現代のオフィスチェアと比較すると、重くてアナログな機能しか備えていないチェアではあるが、この重厚感こそが長いアメリカの歴史の中で積み重ねてきた実績と信頼を感じさせてくれる。
#02 SIKES CHAIR
写真左のデスクチェアは10年以上前に自社の仕入れ商品として入荷したものである。(写真の写りがボケている上にパンチングの穴が開けられていて形状が見えにくいが)チェアの背もたれ中央部分のみレザー張りになっており、座った人の背中に合わせて角度調整が出来る仕組みになっている。木座面の彫り込みや各所のアール形状など、どの角度から見ても惚れ惚れしてしまうディテールデザインだ。これは1859年から1919年まで様々なスタイルの椅子を作り続けてきた名門チェアメーカー「サイクス・チェア・カンパニー」のもの。近年では市場に出回る数も少なく、年々希少価値が高まっている。写真のチェアはその中でもかなり珍しい型である。同社の昔の商品カタログにも掲載が無く、いくらネット検索しても同じ物を見つける事が出来ない。10年以上前に一度だけ入荷した際にその価値を知っていればきっと私物として購入していただろうと今でも少し後悔しているが、これも一期一会であるヴィンテージの価値なのだ。
#03 BANK OF ENGLAND
威厳のある風格を持つこの椅子は、昔イギリスの銀行で使われていたことから「バンク・オブ・イングランド」と呼ばれ、一世紀以上もアメリカで愛用され続けているトラディッショナルチェアの代表格である。先に紹介したGUNLOCKE CHAIRやSIKES CHAIR だけでなく、多くの老舗家具メーカーがこのデザインを模った椅子を生産してきた。素材はオーク材やバーチ材などの硬木により作られていることが多く、肉厚感のある背板からアームまで流れるような曲線外形と骨太の背格子が象徴的。脚は4本脚のタイプとキャスター付きのオフィスチェアタイプのものがある。油断して持ち上げると腰を痛めてしまいそうな重量ではあるが、様々な場所や用途で長年使い続けても壊れる心配が無いような頑丈な作りになっている。この大きな座面に腰を掛けてアームに肘を乗せると、不思議と身が引き締まるような気持ちにさせてくれる。
#04 SHAW WALKER
世界大戦の最中、鉄やアルミなどの資源は軍事目的で大量使用されていた。アルミは家具の素材としても軽くて頑丈な素材のため多くの需要があったという。アルミ素材を用いたチェアでは「エメコ」や「グッド・フォルム」などの家具メーカーが有名だが、「ショー・ウォーカー」もアメリカの高度成長期を支えた歴史あるオフィスメーカーの一つである。同社は 1899年に創業してミシガン州に本拠地を構え、半世紀以上に渡りオフィス家具を製造してきたメーカーである。代表的なプロダクトはオフィスチェア以外に、デスクや本棚など、鉄やアルミ素材をメインとした家具であった。その中でも、背格子や前脚、アーム箇所など、身体に触れる部分のみに木材が使われているミックス素材のアルミチェアが存在しているが、このタイプのものは格別な魅力があり現在のヴィンテージ市場でも重宝されている希少価値の高いチェアの一つだ。
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『THE AMERICAN VINTAGE FURNITURE』の制作秘話はこちらから
ACME Furnitureのオリジンに迫る!(前編)
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Kenichiro Tanaka
2004年にACME Furnitureに入社。ヴィンテージ家具のリペア職人、バイヤー、商品開発担当を経て、現在はディレクターとしてブランド運営を行う。