ジュン君を知りたい

えもーしょん 中学生篇 #68

ジュン君を知りたい

2010〜2013/カイト・中学生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.12.16

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#68
「ジュン君を知りたい」
(2010〜2013/カイト・中学生)

ジュン、ボクは君を知りたい。

って言うかボクは帰りたいけど君が心配でここまで来たら帰れない。

でも、もうボクの足はびしょびしょで先週買ってもらったばっかりの

VANSはもう横のテープが剥がれちゃってるし

もちろん二枚重ねの靴下はチャプチャプ言って、足先の感覚はない。

手もさ、悴んで赤く腫れてるし

それなのに、「君は大丈夫?」の一言さえ言わない。

君のメンタルはどうなっているんだい?

別に、心配して欲しいわけじゃないんだよ

たださ、ただね? 黙々とただひたすらこんなに寒い中。

満面の笑みで歩き続ける君が少し怖くなってきたよ。

ボクは、これから殺されるのかい?

それはちょっと困るなぁ。

だってまだ告白していない人いるし、女優と付き合いたいって夢もあるんだ。

だからね、ジュンお願いだから

もう少し、君のことを教えてほしい。

ちなみにボクは、君の後ろを文句ひとつ言わずに君のテンションになるべく合わせて

頑張っているけど、本音はマジで帰りたいからね。

マジで。

マジで、今すぐ帰りたいからね。でも言わないボクのことも少しは気にしてくれてもいいじゃないか。

まずはさ、君のその謎の大荷物の中身を教えてくれないかい?

「サバイバルだからなにもいらないよ!」って言ったのは君だよね?

君がそう言うからボク、バックに寝袋しか入れてないんだけど…。

ジュン、君はどこかの国のスパイかい?

そうなのかい?

君はいったい何者なんだい?

そういえばボクらはいつから友達になったっけ。

あれ? 君はいつからいたんだい?

やめよう、寒すぎておかしくなってきた。

ジュン、君を知りたい。

ボクは、お腹が減ったよココアしか飲んでいないんだから…。

ジュン、君は朝になにを食べた?

君はなにが好き?

君って普段なにをしているの?

部活を休めないって言っていたけど、何部なの?

「かいと! ここにしよう!」

彼のことばかり考えていたら、もう海に着いていた。

ビーチの奥にある崖の下をキャンプ地とするらしい。

うまく、岩が屋根になっていてまぁまぁいいじゃないか

「よし! テント立てるから!」

あぁ、神様よかった。

サバイバルと言いつつ彼の大荷物にはテントが入っていたよ。

本当によかった。

ジュン、今夜は君のことを教えて。

続く


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