徹夜がキツくなってきた

えもーしょん 高校生篇 #30

徹夜がキツくなってきた

2013〜2016/カイト・高校生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.05.08

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#30
「徹夜がキツくなってきた」
(2013〜2016/カイト・高校生)

あの、エネルギーは一体

どこへ行ってしまったのか。

三日三晩、一睡もしなくても

フルパワーで、はしゃいで

はしゃいで、はしゃいで、はしゃいでいた

あの、エネルギーは

どこへ行ってしまったのか。

最近は、めっぽう徹夜がキツくなってしまった。

現在、時刻は

AM 5:20

なぜ、こんな時間なのかって?

そりゃ、もう

決まっているではないか。

締め切り直前の

原稿の最終チェックの際

たまに、訪れる

「これでいいのか?」

と、逆バカボンがやって来たのだ

すかさず

「これでいいのだ」

と、言えればいいのだが

「これでいいのか?」

と、ボク

「これで、いいのか??」

と、ボク

「これは、ダメだ!」

と、自問自答。

そうなると、もう厄介だ。

それまで書いた原稿を

すべて、消さないと

気がすまない。

こればっかりは

高校の、国語の先生を呪いたい。

ボクは、漢字が苦手だ。

病院に行ってはないが

恐らく、なんらかの病気だ。

漢字を見ると

頭が痛くなる。

これには、訳が

あれは、高校一年生の5月

忘れもしない、初めて

人を呪うと決意した日だ。

高校に、入学して

ほんの少し、学校の仕組みや

授業、友達に慣れて来た頃

国語の、古典ではない方の授業だ。

ボクは、昔から

音に、敏感で

冷蔵庫や、換気扇の音など

モーター系の音をしばらく聞いていると

ノイローゼになる。

この、国語の先生

この人の声は、強烈だった。

少しぽっちゃりの

おばちゃん先生。

どこの、方言か分からないが

たまに、変な言葉を使い

独特の、滑舌の悪さ

独特の、甲高い声。

最悪であった。

この先生は

本が、好きらしく

よく、テストや授業で

「作者は何を伝えたいのか。〜文字以内で答えよ」

と、問題を出してくる。

バカすぎる。

そんなもの、作者にしか

わかる訳がないだろう。

いや、むしろ

こんなにも簡単に

高校生にわかってしまうなんて

逆に腹が立つだろう。

何をこいつは

上から目線で、作者の気持ちを考えろと言ってるんだ馬鹿野郎。

と、先生の声もそうだが

考え方も合わなかったのだ。

ボクは、決まって

「作者に聞いてください」

「知りません」

「考えたくもありません」

「知ってなにになるんですか?」

と、きついことを言ってしまったが

実際そうだ。

そのせいで、ボクらのバトルは幕を開けた。

ある日

「福井、おめーさん、ちょっと来い」

と、呼び出された。

「嫌です」

と、答えだが

無理やり、連行され

別室へ

そこには山のように積まれた

原稿用紙が。

「ここに、この漢字全部書け」

と、高校3年間で教わる漢字を

全部、原稿用紙に書き続けろ。

という、拷問だった。

泣く泣く、ボクは1週間

漢字を書き続け

今に至る。

最終日は、漢字が

空を飛んだり、クルクル回ったり

変形したり、大きくなったり

小さくなったりしていた。

5/27

先生を呪った記念日だ。

しかし、その後も

学校へ行かず

単位が足りず卒業できる訳がないボクに

内緒で、単位をくれたのは

この先生だ。

卒業後は、ラーメンを食べにも行った。

ボクは今でも、呪っているが…。


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