漂流物語 遭難篇

えもーしょん 高校生篇 #24

漂流物語 遭難篇

2013〜2016/カイト・高校生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.04.09

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#24
「漂流物語 遭難編」
(2013〜2016/カイト・高校生)

なにか違和感を感じ

一度、立ち泳ぎをし

止まる。

そして、陸を見ると…!

やはり、そうだ!

どんどんと、塩の流れに乗り

遥か彼方へと、流されているではないか!

クソォォォ!!!

なんてこった!

どんどん、流される体を

腕力と脚力だけを信じ

必死に、陸の方へ泳ぐ。

なんとか、ギリギリ足のつく場所まで

辿り着くと、即座に

泳ぐことをやめ

サンゴなんて、気にもせず

陸へ向かって走る。

ミルキーなきめ細かい砂浜に

倒れ込み

叫ぶのだ

「なんて日だ!!!」と。

ありったけの体力を使い果たし

砂浜に倒れ込んでいるわけだが

これから先、どうするかなんて

考える、体力も残ってはいなかった。

そう、ここからは

サバイバルではなく、本格的な

“遭難”が始まったのだ。

30分ほど倒れ込み

ボーッとしていると

少しだが、体力は回復し

ランニングは出来ないが

テクテクと、歩く事は

なんとか出来る。

しかし、また動きまわっては

体力の無駄だ。

座ったまま、この無人島から

どうにか、脱出することを

考え始める。

しかし、ボクはわがままな人間だ。

この島へ来る前は、毎日暇で

なにもかもが、溢れている

この生活が嫌だ。

いっそのこと、なにもない

無人島でしっぽり暮らしたい…。

そう言っていたのに

今では、コンビニがとてつもなく恋しい。

もし、無事に戻れたなら

コンビニで、働くとここに誓う。

そして、ふと

昔見た、パイレーツオブカリビアンの

ジャックスパロウとエリザベスが

無人島に取り残された

シーンが頭に浮かんだ。

そうだ、酔っ払っていた

ジャックを横目に

エリザベスは、大きな

SOSサインをビーチに作っていた。

よし、まずはそれから始めよう。

いや、その前に

服を拾いに行こう。

と、遠くに見える

洋服を拾いに、ゆっくり歩き始める。

負けるもんか。

日焼けした肌が痛い…。

日焼けの上にTシャツを着るが

動くたびに、擦れて

ヒリヒリ、チクチク

激痛が走る。

海水が、天日干しされ

塩が体に残り

ベトベトしている。

「シャワー浴びたい」

そんな敵わないことばかりが

頭に浮かぶ…

これは、試練だ

ネガティブに捉える人間は

映画では必ず死んでしまう。

負けない、負けるものか。

自ら、拷問するかのように

日焼けした肌の上に

洋服を着ていく

「いてぇぇぇぇぇ!!!」

大いに叫ぼう。

なにも、心配はいらない

なぜって、ここは無人島だから。

無人島だから! ね!!!

「クソォォォ!!!」

と、叫びながら

コツコツと、石を運び

ゆっくりと、ゆっくりと

SOSの形に並べ

水平線に沈む、夕日を眺め

眠るのだ…。

続く…。


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