漂流物語。

えもーしょん 高校生篇 #22

漂流物語。

2013〜2016/カイト・高校生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.04.07

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#22
「漂流物語」
(2013〜2016/カイト・高校生)

嘘みたいな、エメラルドグリーンの海に

三角ピークが割れている。

もちろん、サーファーは0人。

足跡ひとつない、無人ビーチが繰り返し

「なにもない、パラダイスにようこそ」と

言っている。

ヤシの木は、微かに揺れ

カモメが、迎えに来た。

ボクの、漂流物語。

エスケイプ、エスケイプ、エスケイプ。

3回唱えると、現れる

無人のパラダイス。

そこには、なにもない

コンビニも、ファミレスも、自動販売機も

電波も、電気も、なにもない。

10分も歩けば、一周出来てしまう

その島は、名前もないのだ。

ミルキーなきめ細かい白い砂のビーチ

中央部には、亜熱帯植物が

生い茂っている。

太陽は、サンサンと降り注ぎ

海を見ると、やはり三角ピークが

「早くおいで」と割れている。

ここは、完璧なパラダイス。

綺麗な、サンセットが

空を光らせる。

布団も、ベッドもないが

こんなに気持ちのいい気温

空気、砂浜なら

そんな物が欲しいとも思わない。

「あぁ、このまま眠ろう」

そう言って、ミルキーなきめ細かい砂浜に

倒れ込んだ。

心地よい風と

三角ピークから生まれる

チューブのスピッツの音で

目が覚める。

砂浜に寝ていたため

起き上がれは、オーシャンビュー

大きな、水平線を一望でき

地球が丸いことが実感できる。

なぜか、気がつくと

ORANGE RANGEの

「ロコローション」を口ずさんでいる。

そこには、自然と一体になった

自分がいる。

こんな朝は、キンキンの

オレンジジュースにさらに氷を入れて

ガブ飲みしたい…。

しかし

ここは、無人島

冷蔵庫も無いし、もちろん氷もない。

「あぁ」

なら、美味しい

チョコチップメロンパンでも…。

「あぁ」

そう、そんなものも存在はしないのだ。

しばし、落胆。

30分ほど、最高な三角ピークを

眺め、気がついた。

サーフボードがない。

これは、致命傷だ。

と、いうよりも

この事実を自覚した瞬間

完璧な、パラダイスが

一瞬にして、過酷なサバイバルに

変わったのだ。

そう、ボクは

ミルキーなきめ細かい砂浜

完璧な三角ピーク

微かに揺れる、ヤシの木に

まんまと、騙されて

やって来てしまったのだ。

なんてこった。

続く…


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