ホームフードシック

the UNKNOWN #11

ホームフードシック

Contributed by Miyu Fukada

People / 2024.02.21

心の片隅でずっと恋焦がれていた場所、南米。その地に惹かれ続けた理由を確かめるべく、写真家Miyu Fukadaさんが再び当てもない旅に出た。はじめて訪れる地で過ごす、まだ誰も予測できない出来事をリアルタイムでお届け。

#11


2/12 DAY37



クスコの標高は3400m、富士山より1000m高いところに滞在している。マチュピチュより高い。
ここは昨日までいたValle Sagradoに比べたらとんでもなく都会。
交通量は多いし(しかもヨーロッパみたいに歩行者優先ではない。全然止まってくれない。日本と同じ)エアビーの近くにはクスコ一の大学があって、その周りには学生がいっぱい。文房具屋さん、ノート屋さん、コピー/印刷屋、ネットカフェみたいのもある。
どの店も呼び込みをしているのが面白い。
極め付けは、レントゲン屋とか整体みたいなお店がずらっと並んでいるエリアがあってそこでも呼び込みをしていたこと。する必要あるのか?! バスも行き先を叫んで満杯になったら出発するという仕組み。

午後、パメラと近くの市場まで買い出し。セビーチェを一緒に作ることになった。
市場には八百屋、ジャガイモ屋、チーズ家、魚屋、鶏肉、牛肉屋、花屋とそれぞれ分かれていてそれぞれにご贔屓の場所があるという。それをペルーではcasera/caseroと呼ぶらしく、八百屋のcaseraはここなどとそれぞれいつもどこで買うのか教えてくれた。海もないのにセビーチェがあるのがこのペルーの山側に来てからすごく不思議だったけどTruchaというニジマスがどこの店に行ってもメニューにある魚で、これは川魚。川魚だけど臭みはなくサーモンの川バージョンと言った感じ。1kg近くあるTruchaで11soles (400円ちょっと)。
そのほかにチョクロという白い粒の大きいコーン、オレンジ色のスイートポテト、南米でしか採れないチリ、ライム、セロリなどを買い出しして帰宅。
まずは魚の頭や、捌いてもらって食べない部位そして野菜の使わない部分でで出汁を取る。これをChilcano de pescadoと呼ぶ。セビーチェを作るのは簡単だけど、この出汁を冷やすまで待たないといけないのが手間なところ。ニジマスの骨をピンセットで取り除き、食べやすい大きさ(ペルーのセビーチェで出てくる魚の一口サイズが他国で食べたセビーチェより3倍くらい大きくてびっくり(笑))にカットし、また使わない部分はセロリとパクチーと一緒にミキサーにかけLeche de tigreを作る。それを濾したものと、ライム果汁を魚の切り身にまぜ、チリ、パクチー、赤玉ねぎスライスを加えて混ぜ、茹でたチョクロとスイートポテトとコーンを揚げたカリカリしたものと一緒にお皿に盛れば完成。思ったより全然簡単だった。 午後はセビーチェでお腹がいっぱい。贅沢。
その日の夜は市場で買った鶏肉などでスープを作った。 広いキッチンがあるって最高だ。







2/13 DAY38



また6時に起きた。南米に来てからどうしても早く目が覚めてしまう。寝るのも早いからなのか?
残りのスープを温めて朝ごはん。
今滞在しているのは空港近くのとてもローカルなエリアで観光客はいない。SIMカードを買うのにはセンターに行った方がいいと言うことで今日はセンターに行ってみることにした。パメラがどのバスに乗ればいいか教えてくれてそれにのりセンターへ。
バスは一応公共なんだけど、運転手とそしてドアに1人車掌的な役割の人がいてバスが止まると行き先を叫ぶ。
料金は1sol(40円弱)すぐ降りる人は50centでいいらしいがどのくらいの距離感なのかは謎(笑)。
支払うタイミングは車掌が「pasaje,pasaje」(パサヘ)と口にして車内を歩く時に渡す。パサへとはチケットという意味。降りる時は「Bajo!」といえば降りれる。クスコの街は全然歩けるけど盆地にあるので離れようとすると坂になっている。歩くのがめんどくさい時はバスが使える。が、行き先のエリアの名前はバスに書いてあるのだが誰かに聞かないと全くわからない。

さてクスコの中心街は案の定観光客だらけだった。中心の建物はまだコンキスタドール時代のものが残っていて石造、2階にはバルコニーがあるものが多い。時折カラフルなチョリータ(中に何枚も着ているボリュームのあるスカート)を来た若い子や、おばちゃんが道端で何かを売っている。
クスコのマーケットよりもUrubambaの市場の方が開放感があって色も可愛かったな。クスコのSan pedro市場は天井は高いのに薄暗くて衛生的にもそんなに良さそうではない。食べ物、野菜などを売っている場所の奥にはポンチョや民芸品、お土産を売っている場所があって作りはまさにインドネシアの市場と言った感じ。写真はフィルムカメラで撮っていたのでiPhoneには一枚も写真がない。。
ちなみにSIMは、パスポートを持っていかなかったので買えなかった。
家までは徒歩で帰ることにした。途中またもう一つ市場を見つけて入ってみた。とんでもない量のアボカドが売っていた。アボカドは決まってフルーツ売り場にある。山積みのアボカドは初めて見たかもしれない。
その後も行き当たりばったりに歩いているとあのラッパーのTupacの名前の由来になっているインカ帝国最後の皇帝の銅像がある公園を過ぎた。ペルーにもバレンタインがあるそうで、そのプラザではハートの装飾が施されたバザールみたいなのもあった。そっか、明日はバレンタインか。

街にはワーゲンのビートルが所々に駐車されていて色がみんな違うのでスタンプラリーみたいに見つけたビートルの写真を撮りながら歩いていた。お腹が空いてきてたまたま見つけたお店へ入る。papa rellenaと言ってひき肉をマッシュドポテトで包みあげたペルー料理のお店だった。人がいっぱい入っていたので美味しいのだろうと判断。
味は普通だったけど中にはゆで卵が入っていた。papa rellena一つと、チャウファと呼ばれるペルーのチャーハンとリンゴか梨みたいな味のするジュースをお湯で薄めたものがついてきて10soles(400円弱)安い! とってもお財布に優しいお昼ご飯となった。さて、夜ご飯はLomo Saltadoを作ろうと思い、家の手前の市場に寄りロモとフライドポテトにするジャガイモを買って帰宅。私が作ってみようと思ったら、下ごしらえだけして、そのあとは全部パメラがやってくれた(笑)。Lomo Saltadoは日本でも作れそうなメニュー。帰ったらやってみよう。
パメラ曰くちなみに標高が高いのでお湯が湧きにくく米を炊くのも難しいらしい。ご飯を炊くのもパメラにやってもらおう。

市場で全て安く手に入るし、セビーチェはお店で食べたら35solesするけど市場で魚を買えばもっと安くできるからお店で食べるのが馬鹿馬鹿しくなってきてしまった。

南米ではアジア人のことを総括してチノ(chino)と呼ぶ。
特にペルーでは中国人の方が日本人より先に上陸しペルー料理と中華料理のミックス chifaが生まれた。
パメラもひいお爺さんはチリ人と中国人のハーフだという。





2/14 DAY39



SIMカードをゲットしに1番近いclaroというキャリアの店舗まで歩いた。
マップで見つけたそこはどうやらフランチャイズだそうで直営に行けとそのおばちゃんがすぐ近くのモールにあると教えてくれた。ブラジルのclaroとは隣国なのに外国人の扱いが全然違う。
SIMカードはめちゃくちゃ安い。

隣国ということでペルーでもサッカーは大人気。しかも全然大きな大会で勝ったこともなければFIFAでは一勝したのみらしいのになぜか熱狂的ファンが多いらしい。その証拠にclaroの広告にはペルーのナショナルサッカーチームが適用されている。というわけで勝てないのにファンがいるという理由でペルーは南米1サッカーファンが多い国、らしい。 
ちなみにペルーのイケメン率は極めて低い。私の勝手な好みだが。今まで行った国で1番顔の整ったイケメンが多いのはインドネシアのロンボク島とモロッコだった。モロッコは女性も綺麗。アンデス系のペルー人は背も低く163cmの私で背が高い方。クスコまで来るとヨーロッパ移民とのミックスやアンデス系とのミックスなど、こないだまでいた小さな村とは全く違う顔つき


と、これを書いている間に20分以上は経ったけれど、この国にも効率の文字は存在しないので全然進まない。まあ、予定もなにもないからいいのだけど。 

結局2時間かかってSIMをゲット。20GB 30日間有効で45soles (1700円)安い。バスの長旅が控えているので多めにしておいた。

お腹すいたのにどこも店がバレンタイン仕様で入りにくくて結局家に帰って昨日の残りを食べた。

パメラが友達とバーに行くからと誘ってくれたけど早く寝落ちしてしまって行かないことにした。なんだか疲れている。







2/15 DAY40



朝からなんか調子が変。喉も痛いし体がだるい。
ずっとベットでダラダラして、市場に昼ごはんを食べに行ったが食べたいものが食べれず、te de spicaというお茶を買って帰ってきた。健康にいいらしい。
お茶を飲んでずっと寝ていた。

パメラが友達とご飯を食べに行くというので誘ってくれたけどやっぱり調子が変すぎて外には出れない。家で寝ることにした。股関節が痛くてどの方向で寝ても落ち着かない。



2/16 DAY41



朝から太陽が強い。調子は昨日より良くなった。寝て汗をかいて熱っぽかったのもどっか行った。よかったー。こういう時になると日本食が恋しくなる。
ホームシックならぬ、ホームフードシックにはもうこれで2、3回目。

クスコは標高が高いので晴れていても暑いということがない。
晴れてるー! と思って外に出てもさむっ。となることが多い。今日も太陽あると思ってロンTと薄いダウンをきて出たけど出た瞬間はひやっとする。Urubambaでは太陽が出ていたら暑くて、Tシャツで歩けるくらいだったのに。
体調もだいぶ良くなったので、市場の2階にあるお茶屋さん? みたいなところに行ってみることに。メニューに免疫、風邪などそれぞれの症状に聞く飲み薬的なのが書いてあってあって気になっていたのだ。



2/17 DAY42



まだ風邪
昨日もスープしか飲んでいない。



2/18 DAY43



昨日はその前日より少しばかり元気があったので市場に買い物へ行った。NYで風邪ひきそうと思ったらジュース屋さんで買ってたジンジャーショットを作りたくて。
生姜と、リンゴ、レモンを買って家でミキサーにかけ、濾す。生姜がビリビリして胃の中に入ってもビリビリして、ブルブルっと体が震えてなんかシャキッとした感じ。

風邪のおかげで色々考える時間があった。
数年前、自分の写真が何かわからない時があった。ありがたいことにファッションの撮影とか、雑誌など仕事の撮影が多くて自分の撮りたい写真を撮っていない年だった。2018年の11月から本当に仕事も絡めずただ自分の写真ってなんだっけ? の答えを見つける旅だった。パリから入り、ロンドン、バスク、リズボン、そこからジブラルタル海峡経友でフェリーでアフリカ大陸へつき陸路でモロッコへ、数ヶ月の旅。いつものように行き当たりバッタリ、行きたいところには全部行った。その旅で自分の写真が何かと自分の写真の価値がわかった。

今自分の写真が「何か」で悩むことはない。
 
自分の写真が何かで悩んでたのがすごく懐かしい。自分の写真が何かわからなかった時は、人に気に入られようとかもっといいねが欲しいだとか、「すごい写真」だとかにこだわってた気がする。今は街を歩いてあ! と思った風景や人、色とかビビッときたものをただただ自分のために撮っている。現像して後から見た時にうんうんいい写真だなあ! って思える写真をずっと撮り続けたい。それでいいんだと思う。アーティストはそれに尽きる。と、思う。

風邪を引くと思う。日本食が食べたい。いや、日本食までとは贅沢は言わないからせめてお味噌汁を飲みたい。
旅中に定期的にやってくるホームフードシックはこれで3回目。明日の夜からまた10時間のバスでアレキパという別の町まで移動する。そこの標高は2400m。CDMXと同じ。 1000m下がると人間の体は回復しやすいのか?!

クスコに来てから毎日同じ服。鼻が詰まっていて臭いのかもわからない。汗はかいてないから臭くはないと思うが。もうそんなこともどうでもいい。下着はシャワーで手洗い。服はいつ洗おうか?
とりあえずこの鼻詰まりと耳抜きができない状況から早く解放されたい。


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