別れ、そしてリオ

the UNKNOWN #7

別れ、そしてリオ

Contributed by Miyu Fukada

People / 2024.01.24

心の片隅でずっと恋焦がれていた場所、南米。その地に惹かれ続けた理由を確かめるべく、写真家Miyu Fukadaさんが再び当てもない旅に出た。はじめて訪れる地で過ごす、まだ誰も予測できない出来事をリアルタイムでお届け。

#7


1/15



ブラジルに来てから1週間が経った。当然のことながら最初はびっくりすることばかりだったし、言葉も全然聞き取れなかったけど、ようやく耳も慣れてきてなんとな~く言っていることはわかってきた。
今日は連日のスケートでみんな疲れているらしく、スケートはおやすみ。街を散策することに。朝は家の近くでアサイとポンデケージョ(pão de queijo)で腹ごしらえをした。

フィルムを現像したくて、友達に教えてもらったVALE近くのカメラ屋さんへ行ってみた。吹き抜けがある一見普通のショッピングセンターのように見えたが、中に入ると同じ大きさの貸店舗があり、それぞれ中は好きなレイアウトになっていて、古着屋だったり、水着屋だったり、デザインオフィスらしき場所だったりと、今までブラジルで見たお店たちとは違うちょっと洗練されたスペースがたくさんある場所だった。その中の一つにそのカメラ屋さんがあった。着いて、値段と日数を聞くと1ロール 60 BRLで3日かかるという。日本円で1800円程。高いし、時間が長い。3日後の朝にはサンパウロを出発するので間に合わない。サンパウロに戻ってくるかもわからないので諦めることにした。

このショッピングセンターみたいなやつは、インドネシアで思い出した。ジャワ島のバンドゥン、そこはウェアハウスだったけど、同じ大きさの箱が何個もあり、そこで服のブランドやコーヒー屋さんをやっている子たちがそれぞれにお店を構えていたのだ。
この場所も似た感じがあって、ブランドを初めてまもないとか、普通の店舗を構えるには費用がかかるとかそういう難点をクリアしていそうで、サイズ感もちょうどよく、日本にもこんなところあったらなーと羨ましくなった。







1/16



明後日からはリオ、その後はリオからバスで1時間半のサーフスポットに1週間の宿はとってあるがその後が決まってない。行ってみたかったブラジルのカーニバルは2/9-2/14でリオではなくもっと南のバイアにあるサルバドールまで行ってみたいのだがリオからはバスで30時間ほど(国内移動で飛行機に乗る選択肢は節約のため最初からない)で、その後ペルーにもいきたいけど

わーーわーわー

旅をすると気づくが、行く時は結構計画もなしに飛び出すのに出たら出たでその後どうするか 次はどこに行くか知りたい派で次が決まってないとソワソワしてしまう。そんなわけで今日は朝からソワソワ。この先が真っ白な白紙というのに全然慣れていない。でも今回の旅は自分と自分の出会いを信じて本気で流れに身を任せるのもありなのかもしれない。

とりあえずこの先の予定は一旦置いておくことにして外へ出た。

昨日行った家の近くの場所でオレンジジュースとpão de queijoを食べた。そのまま、彼のスケート待ち合わせ場所へ。
サンパウロに来てからスケート友達としか会ってない。そろそろ自分ペースに戻したいなあ。
待ち合わせした後違うスポットで残りの友達と合流し一日スケートをみていた。今日も暑かった。サンパウロについてから夕方から絶対雨が降っていたのにここ数日は降っていない。





1/17



サンパウロ最終日

今日はバルセロナで友達になり、「anna magazine」でも取材したスケーター/タトゥーアーティストのGabiにタトゥーを入れてもらいにきた。去年の夏にバルセロナで入れてもらおうと思ったけど、体調が悪くなり延期した。それがまさかブラジル、サンパウロで実現するとは!

数ヶ月ぶりに会ったGabi。来月にはバルセロナに戻るという。ビザ問題もクリアして国外に出れるようになったという。「なんでブラジルに来ようと思ったの?」と聞かれた。「昔から日系の友達がいたりサンバのリズムとか音楽も好きだし、ブラジル人に間違われたりするし、日本の反対側のブラジルに興味があったんだよね!」 と答えた。

スケーターのタリスもその友達のガブリエルも言っていたが、リオには観光客が来てもとくにサンパウロにくる外国人はごくわずかだそう。確かに街にいても聞こえてくるのは99.999%ポルトガル語だし、ブラジルの別の都市から観光に来てるらしい人たちには会うが外国人はあまり見かけない。

ブラジルに来てバルセロナにいるブラジル人がなんとしてでもバルセロナに留まるために色々とお金と時間のかかるビザ問題もクリアしている理由がわかった気がする。そして、ブラジル人のハングリー精神にすごく勇気と元気とやる気をもらった。そんなことを彼女に伝えると、「そう、ブラジル人は諦めないってよく言うね。みゆが感じたことはなんとなくわかる気がするよ。サンパウロにはもうやりたいことがないんだ。朝起きて外に出るとホームレスがいっぱいいる生活、国にいると気が滅入る。そもそもの問題は教育にあると思う。学校では世界の広さとか人生の可能性は教えてくれない。だから自分が生まれ育った環境しか知らずに生きている人がブラジルには沢山いるんだよ」と話してくれた。

やりたいことが見つかった時死に物狂いで頑張るのはそのためなんだろう。タトゥーはGabiのオリジナルデザインで「ARIGATO」と入れてもらった。

そのあとはいつものメンバー、タリス、アタリ(タリスの彼女)、ガブリエル(フィルマー)と隆平(私の彼)とVALEで合流し、このスポットのレジェンドスケーター Marcelo Formigaに一瞬会って隆平の髪を切りにバーバーショップへ連れて行ってもらった。 バーバーのあるSantanaという駅の目の前には30年前、南米1の刑務所があり、そこで警察による囚人の虐殺があったからなんとなく空気が澱んでいるんだ、とタリスが教えてくれた。

ヘアカットを待っている間ブラジルのストリートフード Pastelのお店にタリスとアタリが連れて行ってくれた。なんとその店はオーナーが日本人らしく、名前が「NAKAMA」だった。仲間の意味はブラジルのポルトガル語で俺らは一緒だ(We are together)的な意味のEstamos Juntosを略してタモ ジュントって感じの意味だよと話すと、Tamo Junto na cama (一緒に布団に入る)と聞こえて、それをジョークにみんなで笑っていた。

バーバーに戻るといきなりの豪雨。 隆平はブラジリアンスタイルのスキンフェードにしてもらいリオへ行く準備も万端! 雨もおさまったところでVALEへ戻った。

サンパウロの地下鉄は日本のように通勤/帰宅ラッシュがやばいらしい。確かに夕方17時を過ぎるとものすごい量の人々が地下鉄の駅に吸い込まれていくのを何度も目撃した。幸い上りの電車なのでラッシュにはならず地下鉄に乗れたからよかった。

VALEへ戻り、もう1人のガブリエルも合流してみんなでビールを飲みながらそれぞれ会話をする。私はたまーにGoogle翻訳を使いながらポルトガル語で会話ができるようになって来た。その頑張りの成果もあったのか、アタリが「サンパウロにたまにくる外国人とは私達がいつも英語を頑張って話してるけどみゆはポルトガル語もう普通に話せるね! すごいよ!」 と言ってくれた。嬉しかった。

この1週間みんなと スケートの話、人生の話、それぞれの兄弟、旅の話、食べ物のこと 色々話した。 タリスが「バイバイするの寂しいな」と言った。それを聞いて、あぁ本当に今日でバイバイなんだなと実感が一気に湧いて、あらゆる感情がこみ上げて感極まりみんなとハグをし合う間に涙がポロっと出てしまった。「悲しい涙じゃないよね! 嬉し泣きだよね!」とアタリ。

そう、嬉し泣きだよ。 地球の反対側に仲間が増えるなんて想像してなかったし、何よりこの1週間ちょっとで色んなところに連れて行ってくれて、ローカルフードも経験させてくれて本当に本当に良くしてくれて、そんな「仲間」に恵まれたことが嬉しくてありがたくて。「また世界のどこかで会おう!」と言葉を交わしバイバイした。







1/18



5:30に起きた。7:30のバスに乗るため、6時過ぎにはUberを呼んだ。

「荷物あるのー? 荷物あるならUberXじゃダメなんだよ〜 バッグ有りの方を選んでもらわないと〜 料金が違うんだよ〜 バッグあるなら来なかったよ〜 でも今日はいいよ、仕方ないなあ 次は気をつけてね!」 と運転手のおっちゃん。一字一句正確ではないが、そんなことを言っていた。「あーごめんなさい、慣れてなくてわからなかったよ。ありがとう」と言って乗り込んだ。Tieteというバスターミナルへ。送迎の乗降場は若干カオス。渋滞。早めに出ておいてよかった。おっちゃんにありがとうと伝えてUberを降りた。「良い旅を!」

ターミナルはバカでかい! ターミナルが100もある。こんなのみたことない。バスはSemi Leitoというクラスのにしたので椅子も倒せるし脚を置く板もある。USBで充電もできるし、飛行機より全然快適だ。

どこまでも連なる山、途中にはオレンジ色のレンガ屋根の家もあったりして、どこかインドネシアみたいな景色もあった。到着時刻の13:30で渋滞にハマった20分くらいだろうか、ようやく動き始めた、と思ったらまた止まった。そんなことを繰り返しながら、ようやくリオのバスターミナルに到着。予定より2時間の遅れ。許容範囲内。

リオは蒸し暑い! ひとまず宿に着いて腹ごしらへ。朝ごはんを少し食べただけでバスに何も持ち込まなかったのでお腹はぺこぺこだった。近所のお店に入った。サンパウロより値段が少し高めなようだ。ビーチまで歩いてみる。うわーめっちゃ観光地。サンパウロでは見なかった外国人がわんさかいて、さすがコパカバナはブラジル1の観光地だ。物売りも多いし何よりビーチは人だらけ。夏の湘南や、バルセロナのバルセロネタビーチくらいすごい人だ。バルセロナでは電車で1時間ほどの私たちのプライベートビーチみたいなひみつの場所があって夏はそこばかり行っていたからこの人の多さに慣れない。とりあえずコパカバナに行くことはほぼないだろう。というわけで、昨日Gabiにお勧めされていたイパネマビーチのはじの方へ行ってみた。人は多いけど地元の若者で溢れていた。

リオは蒸し暑い。サンパウロは高層ビルだらけで東京みたいだから、リオにくればもう少しカラッとしているのかと思いきや、もわっっと蒸し暑い。宿も蒸し暑くて、備え付けの窓にはめ込まれている扇風機みたいなのをつければ多少はマシだが、音がすごくうるさい。

その日は例のブラジル刑務所Carandiruの映画を観て寝た。







1/19



明け方に目が覚めると雨の音。8時に起きた時には雨が止んでいた。とりあえず朝ごはんを食べに昨日チェックしてみたいと思っていた宿のすぐ近くのパン屋へ行ってみた。ブラジルのcafe com leiteは美味しくない。これはサンパウロでもそうだったのだけど、サンパウロでは特にコーヒーを頼むとインスタントみたいなやつが出てくる。今日頼んだコーヒーはアメリカンを牛乳で薄めたみたいなやつだった。スペインみたいに安くてもまともなコーヒーにはまだありつけていない。

その後イパネマ方面へ歩いてhavaianasのお店や水着が売ってそうなお店に 寄り道しながら散策。havaianasの正規店では34BRLするビーサンを、その後に見つけたお店で24BRLで発見。どうしても黒がつまらなすぎて、もう一個可愛いオレンジっぽい赤のビーサンをゲット! 正規店で買わなくてよかった。

その後、気の赴くまま歩いてみると公園の周りで開かれているマーケットを発見。グァバやマンゴー、バナナ、ジャックフルーツ、パッションフルーツなど南国ならではのフルーツが綺麗に並べられ、ココナッツや、海が近いわけかお魚も並んでいたりと、ローカル感溢れた場所に行き着いた。そこではグァバとマンゴーをゲット。その後もマーケットをぐるっと周ってみると、可愛い女の子が売っているビキニを発見。一回通り過ぎてみたが、やっぱり可愛いかったし、値段も安かったので戻って着ている服の上から試着してサイズをチェックし、ビキニをゲット!

宿に戻り、さっき買ったビキニを着てビーチへ再度出発。私の財布(フィルムケース)にお札を折りたたみ、ケータイは宿に置いて 必要最低限の荷物で挑んだ。ビーチへ行くと午前中だからなのかまだ人は昨日見たのより半分以下。 波がある! しかし、ダンパー気味であまり良くない。日本では色々と忙しかったのと波があまりなくて、最後にサーフィンしたのは10月。もう3ヶ月も前のことだ。ソワソワした私をみかねてか、隆平に「やったら?」と言われ、ビーチにあるレンタルボード屋さんに値段を聞きに行ってみた。1時間で50BRL、2000円しない。じゃあやってみるかと、6’5くらいのスポンジボードを借りて、ひっさしぶりにサーフィン。波は早いしダンパー気味で難しいけど、気持ちよかった!! おかげでもう真っ黒!

ちなみにやっぱり物価はサンパウロより高め。ビールは安いかもしれない。高いと言っても数百円の差なのだけど、サンパウロの値段に慣れているとどうしても高く感じるんだなあ。







1/20



6時に起きて7時には家を出てUberで30分くらいの違う海に行ってみることに。

彼がもう少しサーフィンしたいと言ったので、
もうちょっといい波でと思い調べて来てみた。
が、着くと波がでかい。しかもビーチブレイクなので、波が割れるのも早いし、少し掘れ気味。
私だって入るのが嫌なのに、これは初心者にはもっと無理な波だ。

とりあえず板を借りるところを探すと、マップにはあるはずなのに見当たらないのでビーチでチルすることに。
波を眺めているとスクールらしき人がいたのでどこで板を借りたのか聞き、同じラッシュガードを着ている人にいくらで板を借りれるのか聞いてみると、

「板は貸してないんだ。ここは波が大きいからね。
1時間のレッスンで150BRLだよ。」

日本円で5000円弱。
せっかくだから入りたい気もしたけどイパネマなら3回ボードを借りれる値段で今更教えてもらうこともほぼないのにただ一緒に入ってもらうだけでそこまで払いたくないし、波にも入りたい! というようなタイプではないので今日はここでダラダラすることにした。

昨日とは打って変わって太陽がギラギラ。
時間が早すぎて、ビーチにはまだ物売りも来ない。
家から持ってきたマンゴーで腹ごしらえをした。
そしてパラソルを借りることにした。

このエリアはコンドミニアムや、高級マンションエリアらしく、いる人も白人系ブラジル人ばかり。海も落ち着いていて、ものが取られそうな雰囲気はなかった。
ビーチを往復しているコーン屋さんと肉の串焼きを食べ、ビールを飲みカイピリーニャを飲み海でぼーっとする。
たまに泳ぎに行って体を冷やす。
気付いたら肌は真っ黒になっていた。

昼過ぎ、お腹が空いたが周りに良さげなご飯屋さんがなく
エリア的にも値段が高そうなので宿へ戻った。

近くでお昼を食べ、家につきシャワーを浴びる。
久しぶりにこんなに日焼けをしたかもしれない。
ヒリヒリする。
彼の体も真っ赤。
これは痛いわ。
文字に書いた通りのsunburn
何もしていなくても痛いらしい。

夜は宿近くのお店へ。
気になっていたFrango a passarinho を頼んでみた。
お皿にてんこ盛りに運ばれてきたのはちょっと揚げすぎた唐揚げみたいな。
美味しいんだけど量が多すぎる。
残りは帰りにコンビニの前で物乞いをしていたホームレスのおじさんにあげた。
リオはなんかバリと似ている。







1/21



ブラジルの次はペルーに行きたい。
というわけで、オリンピックで一緒のチームで働いたペルー人のアントニオに連絡をしてみた。

クスコ方面にも行きたいと伝えるとクスコで宿をやっている彼の友人を紹介してくれた。
インスタでメッセージを送るとクスコでできることを色々教えてくれて、しかも2月の頭にマチュピチュを最終目的としたトレッキングツアーに行くという。
マチュピチュは1人で行けるものでもないし、もし1人でガイドを雇っていっても高くつく。
ブラジルでみたかったのはもちろんカーニバルだったけどカーニバル時期はエアビーもその部屋でその値段?! と言った感じに高くなるし、多分町も海も人だらけになるだろう。

ブラジルに来てからサンパウロも人が多かったし、リオももちろん観光地で人が多いので気づかないうちに相当人疲れしていたようで人の少ない場所に行きたいと思い始めていたらしく、カーニバルでさらにカオス、全て高くなる前にペルーに行っちゃおうかなという自分でもビックリするアイデアが浮かんで、航空券やら色々と調べてみた。

リオは海もあっていいんだが、やっぱりポルトガル語を流暢に話せないので、思うようなコミュニケーションが取れなくてそれが少しばかりストレスになっている気がする。
友達から紹介してもらったリオのローカルともいまだに会えていないし、タイミングがあっていなくて、もうこれはペルーに行けと言っているような気もした。

リオのカーニバルもそれはそれですごいんだろう。
でも毎年行われているし、元々みたかったバイア地方のカーニバルに行くにはバスだと30時間以上
飛行機も国内移動なのに高いし、今行くタイミングではなさそうだ。

早くスペイン語を話したいなあ。



Tag

Writer