えもーしょん 小学生篇 #57
ボクの超能力
2003〜2010/カイト・小学生
Contributed by Kaito Fukui
People / 2020.10.20
小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!
#57
「ボクの超能力」
(2003〜2010/カイト・小学生)
小学生6年生まで、ボクには超能力があった。
正確に言うと、初めて付き合ったヤンキーの彼女と
図書館のでキスするまでは、本当に超能力があった。
どんな、超能力かと言うと
好きになった女の子が毎晩必ず夢の中に出てきてくれて
理想のデートをしてくれるという、今のボクに足りない
とってもピュアな超能力だ。
初めて、この超能力に気づいたのは
小学生2年生の夏休み。
夏休みの真っ最中に、なんとインフルエンザにかかり
部屋で隔離されていた時のこと。
冷房の効いた、快適な部屋で
もうすっかり元気なのに、とにかく寝ていないといけない。
地獄の時間、何度寝したかも分からないが
昼間、ゲームも漫画もすべて遊び尽くし
いよいよ、寝るしかやることがなくなった。
結局、何度も何度も眠り夜ご飯を食べた後のこと
「いつになったら、外に出られるんだよ…」
と、24時間テレビが始まりもう夏休みは
残り数日しか残されていないことを悟ったボクは
一度でいいから、夏祭りに行って
片思い中の、アサちゃんの浴衣姿を見たいと強く願った。
浴衣じゃなくてもいい、めっちゃ短いデニムのパンツでもいいから
アサちゃんが、屋台の電気に照らせれ「あっつ~い」とうちわで扇ぐ。
姿を一度でいいし、なんなら遠くからでもいいから見たい!!!
と、強く、心で願った。
願い、願い、願いまくった夜。
そのまま、寝落ちすると突然
満月の夜に、アリゾナのような広大な土地に1人ポツンと立っていた。
「ここは、どこ?」と独り言を呟くと
崖の上に、何やら動物らしき影が現れた。
ボクは、そこへ向かおうと
ハルクのように、思いっきりジャンプをし崖へ登った
そこには、大きなオオカミが一頭
こちらを見ている。
そして、オオカミは「よくがんばった」と一言。
「あおおおおおおおおおおおおおおおお!」
と、満月の夜空に向かって吠え姿を消した。
なんだよ、今のは。
崖のすぐ後ろの、ジャングルを彷徨い歩いている。
奥に、浴衣を着た美女が1人立っている。そして
ボクに気がつくと、振り返る。
そこにいたのは、なんとアサちゃん。
「アサちゃん! こんなところで何してるの!?」
「かいと、待ってたのよ。沖縄、行きたいんでしょ?」
「どうして、知ってるの?」
「理由はいいでしょう。さ、行くよ」
アサちゃんは、ボクの手を取り
ボクをお姫様抱っこし、飛んだ。
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Kaito Fukui
1997年 東京都出身 幼少期から波と戯れ、サーフィン、スケートボード、恋に青春。 あの時、あの頃の機微を紡ぐように幾層ものレイヤー重ね描き、未来を視る。 美化されたり、湾曲、誇張される記憶を優しく繊細な浮遊感で!