漂流したい。

えもーしょん 高校生篇 #21

漂流したい。

2013〜2016/カイト・高校生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.04.06

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#21
「漂流したい」
(2013〜2016/カイト・高校生)

ある日ふと、屋根裏部屋の古い雑誌を手に取った。

ホコリをかぶった。その雑誌は

1999年の物だった。

それは、何年もそこに放置されていたが

確かに命を感じた。

ボクは、表紙をめくった。

そして、始まった…。

表紙をめくった瞬間

本の、止まっていた時間が、時計が

確かに、動いた。

こちらの世界は2015年

約16年ぶりに、息をした本は

少し嬉しそうに、ボクを迎えてくれた。

この瞬間が好きだ。

昔の雑誌や本を見つけ、めくるたびに

当時の景色や、作り手の話の癖を感じる。

今と当時のギャップを肌で感じる。

この瞬間が好きだ。

もしかしたら、当時の作り手は

この世にいないかもしれない。

しかし、この本にはしっかりまだ

生きている。

これからもボク以外の

誰かが、ページをめくるたびに

この世界に存在することになる。

ボクも、そうやって

たとえ、死んでしまっても

いつの日か、誰かの目にとまり

その人に、なにかを与えられるような

大人になりたいと、思いながら

本の匂いを嗅いだ。

さて、肝心なタイトルは

漂流したい。

高校3年生のボクには

いいイメージはない。

なぜなら、つい最近

台風の中、海へ行き

サーフィンをしていたところ波に飲まれ

テトラポッドに吸い込まれ

その後、沖に流され

しばらく海で遭難し

死にそうになったからだ。

サブタイトルには

島に向かうなら今だ。

と、島に向かうタイミングが

いくつか載っている。

例えば

1.宴会の場で、ふと独り取り残されたと感じる瞬間。

2.今日も確認してないメールが10通以上ある。

3.帰り支度の最中に上司から「カラオケ行こう」と誘われた。

など

なんだか想像がつく。

そして、だんだんと

空気は歪み

青い空が見えてくる。

嘘みたいな、エメラルドグリーンの海に

三角ピークが割れている。

もちろん、サーファーは0人。

足跡ひとつない、無人ビーチが繰り返し

なにもない、パラダイスがようこそと

言っている。

ヤシの木は、微かに揺れ

カモメが、迎えに来た。

ボクの、漂流物語。

続く…。


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