えもーしょん 小学生篇 #50
涙が止まらない
2003〜2010/カイト・小学生
Contributed by Kaito Fukui
People / 2020.08.28
小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!
#50
「涙が止まらない」
(2003〜2010/カイト・小学生)
ファーストキスは、ストローによる
間接キスだった。
お相手は、5つ年上の
あっちゃん。
近所では、1番可愛い女の子だ。
雑誌にも出ている。
ある日、ボクはあっちゃんを誘って鎌倉へ行った。
何気ない会話に、何気ない時間
2人で自転車を頑張って漕いだあの134。
ボクは決して忘れることはない。
「サヨナラだけが人生さ」
ボクが勝手に師匠と思っている
あの人は、そう言った。
その言葉の通り、ボクは
ストロー間接キスを交わしたあと
いざ! 本番!
の、チューをする寸前。
気持ちよりも先に、体が動いてしまった。
ボクは、訳がわからず
ただ、ひたすら走った。
止まらぬ涙。
止まらぬ動悸。
謝ることもせず、ただ走った。
みんなのマドンナは
ひとり、うずくまり泣いている。
そんな彼女を見ても、ボクは走って逃げた。
遡ること5分前。
ストローによる間接キスをキメ
有頂天のボク
「チューしよう」
そんなボクを畳み掛けるように
あっちゃんは言った。
「う、うん」
と、うなずくと
にこりと笑った。
夕陽に照らされ、輝く笑顔
白い歯に挟まるおにぎりの海苔
なぜ。
ボクはその瞬間
ジャックと豆の木に出てくる巨人が
彼女と重なった。
重なってしまったのだ。
なぜかはわからない。
「歯に海苔が挟まってるよ」
素直にそう言えばよかった。
が、ボクの中ですべてが完璧のあっちゃんに
そんなことはいえなかった。
しかし、そのままチューをするのは
もっと出来なかった。
どうしたらいいのか
そんなことも考えずに、走ってしまった。
家に帰り、枕を濡らしていると。
ピーンポーン
と、インターホンが鳴った。
「はーい」
と、インターホン越しにママが誰かと話している声がする。
すると
「きゃーーーーーーーーー!」
ママが叫んだ。
慌ててパパが「どうした!」
と、ママの方へ行った。
すると、「かい!! 窓を閉めて鍵をしろ!!」
突然、パパが叫び
家中の窓を閉め、鍵をした。
ボクを迎えにくると、リビングへ行き
「ここにいろ」
そう言い、110番通報をした。
パパは
「包丁を持った血だらけの女がこちらを見て笑っている」
と、お巡りさんに伝えた。
お巡りさんは
「どの辺ですか?」
そう言うと
パパは窓の方へ行き
外を見る、しかし外には誰もいない。
「ど、どこだ!!!」
パパが叫んだ。
すると、下の階で物音がした。
お風呂の方だ
「ココダヨ、イマカライクヨ」
女の声がした。
バン!
と、家中の電気が消えボクは気絶した。
ハッ!
と大量の汗とともに
朝、目が覚めた。
すると、ピーンポーン
インターホンが鳴った。
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Kaito Fukui
1997年 東京都出身 幼少期から波と戯れ、サーフィン、スケートボード、恋に青春。 あの時、あの頃の機微を紡ぐように幾層ものレイヤー重ね描き、未来を視る。 美化されたり、湾曲、誇張される記憶を優しく繊細な浮遊感で!