ニューサマーオレンジ

Emotion 第33話

ニューサマーオレンジ

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.09.04

「唯一無二の存在になりたい」オワリと「計画的に前へ進み続ける」カイト。ありふれた日々、ふわふわと彷徨う「ふさわしい光」を探して、青少年の健全な迷いと青年未満の不健全な想いが交錯する、ふたりの物語。


第33話

多々戸浜の透明な海に光が差し込み、自分の足のすぐそばを小さな魚の群れが泳いでいる。カイトはボードに立って横に走るまでは海から上がらないと言う。

潮が上げて、こちらはほとんど立ち泳ぎ状態だということも彼は知らないのだろう。大きな波を避け、もし途中で転んで波に飲まれても怖くないように小さな波を選んでいることも。

カイト「もうちょい、デカイの行きたいな」

彼は、ボードの上でうつ伏せになりながら言った

僕「大丈夫か?ぐるぐる巻かれても知らないよ」

カイト「大丈夫、大丈夫、思いっきり押して」

僕「了解」

3つ後ろに見える大きな黒い影。彼が求めるならばとボードを砂浜の方向へ向けて用意する。ぐんぐんと迫って来る大きな波に吸い寄せられちょうど良いタイミングで思いっきりボードを押した。

僕は大きな波の下に潜り、波が去るのを待ち浮上すると波の先にカイトが見えた。ほんの少しだが横方向に進んでいるように見える。あぁ、これでやっと上がれるのか。と次に来た波に身を委ねて彼の方へ向かうと。とても満足したような顔でこちらを見ていた。

やはり、海から出てボードを片手に砂浜に立っていると僕よりもサーフィンをしていたのではないかと思う。

僕「どうだった?」

カイト「最高!一旦休憩してもう一回やろう」

僕「う、、、」

カイト「まぁまぁ、ニューサマーオレンジ買ってあげるからさ」

ニューサマーオレンジ…それは…この世界で1番好きな果物。最近の甘すぎるみかんとは違い、酸っぱく程よい甘さと爽やかな香りは初めて下田に来た時に僕の心を掴んだ。都内のスーパーではほとんど扱われないからこちらに来てもしかしたら出会えるかも。と期待していたが。これは心が揺らいでしまう。


続く



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