湘南

Emotion 第21話

湘南

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.08.14

「唯一無二の存在になりたい」オワリと「計画的に前へ進み続ける」カイト。ありふれた日々、ふわふわと彷徨う「ふさわしい光」を探して、青少年の健全な迷いと青年未満の不健全な想いが交錯する、ふたりの物語。


第21話

眩しい太陽、キラキラと光る海。上半身裸でマラソンをするイケてるオジサン。ビール腹の真っ黒のサーファーがバイクに乗っている。

東京から約5時間、僕たちはついに海へ出た。ここから海沿いに南へ進むか北へ進むか、僕たちはお昼を食べながら話し合った。

カイト「俺は夏の間に涼しい方へ進みたい」

僕「それは北に進むと言うこと?」

カイト「そう」

僕「ちなみになんだけど、夏の間にってこの日本一周のゴールは秋になるの?」

カイト「それはわからない、とりあえず一ヶ月で帰れる気はしてたけど」

カイト「ここまで来る途中にそれは厳しいと思った」

僕「なるほど」

正直、ここまで来る途中暑さで何度か意識が朦朧とした場面があった。休憩したいけれど、彼はどんどん進むばかりで止まってはくれなかった。自分を押し殺して、ただひたすらに無心でペダルを漕ぎ続けたが。どうやら、一緒に旅をするとなると僕たちは相性がとても悪いようだ。

僕「あのさ、これは提案なんだけど」

カイト「何」

僕「僕はこのまま南へ行くから、カイトは北へ行って。またここで再開するのはどう?」

カイト「ほぅ、それは面白いね」

僕「うん、なかなかありだと思うよ」

彼は、少し下を向いて考えていた。

カイト「お互い一周したら半周の辺りで会うことにならない?」

僕「確かに、それならさカイトは青森の方までとりあえず太平洋沿いを進んでまた戻って来たらどう?」

僕「僕も和歌山辺りで戻って来るよ」

カイト「それなら夏の間に終われそうだな」

僕「うん」

カイト「やってみるか」


続く



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