全部Lサイズ

海と街と誰かと、オワリのこと。#24

全部Lサイズ

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.02.15

大好きな海を離れ、アーティストになったオワリ。居心地の悪さを感じながら、それでも繰り返されていく毎日のあれこれ。「本当のボクってどんなだっけ?」。しらない街としらない人と。自分さえも見失いかけたオワリの、はじまりの物語。


突然イベントに出ることになった。本当に売れなくてもいいか、何度も林さんに確認した。聞くたびに大丈夫。と言ってくれたから信じて30枚作ってみた。Tシャツのサイズは何サイズを何枚作ったらいいかわからなかったので加藤さんに相談して、全部Lサイズに。デザインも3つから5つに増やしてお気に入りのデザインを多めに作った。

ーーイベント前日

いつもより早く目が覚めた。アラームに起こされることなく早起きをして、時間があるからゆっくりお風呂に入った。今日は夕方から3人で会場へ搬入をする。帰りが遅くなるかもしれないし疲れるから、泊まる用意を持ってきて。と林さんに言われたことを思い出し、お風呂から出て準備をする。

イベント会場は横浜の赤レンガ倉庫。どんなイベントかはまだ知らないけど、多分大きなイベントだと思う。オフィスに置いてある大量の荷物を見てなんとなく予想した。2人はイベント期間中、デザインした車のPRブースにいるらしい。僕は多分、ずっと1人。


着替えをリュックに入れて、泊まるかもしれないから家の戸締りを確認。ちょっとだけでも売れますように、と靴紐をいつもより強く結んでオフィスへ向かう。今日は夕方まで2人の手伝える事があったら手伝って夕方を迎えようと思う。オフィスに着くと昨日僕が帰るときよりも荷物が増えていた。

僕「おはようございます」

林さん「おはよう、散らかっててごめんね」

僕「全然大丈夫です」

僕「何か手伝えることありますか?」

林さん「まず、オワリの持っていくTシャツをまとめて車に運べる?」

僕「はい、すぐやります」

林さん「終わったら声かけてね」

作業部屋に入ると置き手紙とTシャツがダンボールの中に入っていた。

「念のため枚数を確認してから閉じてね」


きっと加藤さんだ。枚数を数えながら畳んでダンボールに戻しテープで閉じて車に運んだ。

僕「林さん、終わりました」

林さん「はやいな、ありがとう。そうしたら加藤が先に会場にいるから、オワリも向かえる?」

僕「はい、大丈夫です」

林さん「会場に着いたら、加藤に連絡して」

僕「はい、わかりました」

電車に乗って、会場へ向かう。途中遊園地の中を通ってカップラーメンを作れるミュージアムの方へ寄り道をした。赤レンガを目指して歩いていると搬入待ちなのだろうか、車の行列が続いていた。その行列に沿って進むと沢山のテントが並んでいた、奥には大きなステージが見える。加藤さんに電話を掛ける。

僕「もしもし、加藤さん会場に到着しました。

加藤さん「オワリ君、何が見える?」

僕「多分、会場の一番大きい入り口のゲートの前です」

加藤さん「あ、いた!」

おーーーーい。とこちらに手を振る加藤さんを見つけて向かう。

加藤さん「迷わなかった?」

僕「車の列に沿ってきました」

加藤さん「なるほど」

加藤さん「オワリ君はここのテーブルを使ってね」

僕「ありがとうございます」

入り口からすぐ近くのブースの端に大きなテーブルを用意してもらった。加藤さんは忙しそうにしていたので変に声を掛けず、後ろの荷物を片付ける。しばらくして、林さんがやってきた。車から荷物をおろして2人の手伝いをした。作業は夜中まで続いて、くたくたになってホテルに到着。ご飯を食べるより早く寝たかったのでシャワーを浴びて、アラームを10分置きにセットして眠る。


続く



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