New kid on the block. #1

旅の気配と、自意識と。

Contributed by Ryo Sudo

People / jun.22.2020

anna magazine編集長、須藤亮がステイホーム中に考えたことと、すこしだけ、旅の思い出。

#1

おみやげは「自分のために買うもの」だと思っている。

僕の家では、アメリカを旅するたびに買ってきたおみやげが部屋のあちこちのスペースを侵食している。どこに行っても必ず購入するのが「マグネット」なのだけれど、すでに冷蔵庫の上半分を占領中だ。

ちなみにマグネットを買うのは「世界中のどこに行っても必ず売っている」おみやげだから。けど、ほとんどのマグネットは「クールなデザイン」という視点からは最も遠い「一体全体どうやって考えついたんでしょう」という感じの独特な感性でデコレーションが施されたものばかりなので、誰にも見つからないように急いでこそこそと購入する。同行者に「あ、わかってないな、この人」と思われるのが、なんとなく気恥ずかしいのだ。ああ「自意識」ってこんなにも面倒くさい。旅先くらい、解放してほしい。

その土地の人々とコミュニケーションしながらリサーチした食べ物とか工芸品とか、その地域らしい特別なおみやげを購入するのも面白いけれど、僕は同じジャンルの「小さなおみやげ」をまとめてアーカイブしておいて、日々の暮らしのふとした瞬間に「へえ、僕って今までこんなにいろんな場所に行ったんだ」と、ニヤニヤしながら感慨に耽るのがとても好きなのだ。ひとつひとつはたいした価値があるものじゃないけど、それにまつわる「できごと」を思い出すのがとにかく面白い。

「夜中にトイレが見つからなくて、焦って見つけたロードサイドの謎レストランで売ってたやつ」とか「みんなスケートボードをしていて仲間はずれ気分だった時、いじけて入った本屋で見つけたやつ」とか。ひとつひとつのマグネットをぼんやりと見ていると、それを買った時の状況とか気分とか、すっかり忘れてしまっていた旅の小さな気配を、驚くほど鮮やかに思い出すことができるのだ。

 



旅の最中には数えきれないほどいろいろなことがあったはずなのに、旅を終えてみると「雄大な景色を見た」とか「知る人ぞ知る場所に行った」とか、特別な瞬間しか覚えてないものだ。普段行けないような場所に行ったり誰かが辿ったルートを追いかけたり、そんな大きな驚きに満ちた旅も楽しいけれど、どこにでもあるように見えるのになんとなく気になった街の風景だとか、小さくて甘酸っぱい気持ちの揺らぎとか、自分だけの「旅の気配」をじっくりと味わうこともまた旅の楽しみのひとつだと思う。

そんなわけで「どこにでも売っている」が、僕のおみやげ選びの最も重要なキーワードなのである。

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