スウィートなマイバイク

えもーしょん 小学生篇 #37

スウィートなマイバイク

2003〜2010/カイト・小学生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.06.16

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#37
「スウィートなマイバイク」
(2003〜2010/カイト・小学生)

小学3年生。

ムンムン、暑苦しい夏。

茅ヶ崎駅前の、いやぁな臭いが

夏の湿気で際立っている。

藤沢駅前とは、これまた違う

すこーし海の匂いが混じった

茅ヶ崎の匂いだ。

家族で、駅前の中華を食べに行った。

「かい、なににする?」

と、ママ。

「ラーメン」

と、ボク。

普段、家で食べるラーメンは

98%具なしラーメンの為

ボクは、外でご飯を食べる際

ラーメンがあるお店では

美味しかろうが、そうでなかろうが

必ず、ラーメンを頼むのだ。

それが、例え

醤油でも、味噌でも、塩でも、豚骨でも

ラーメン、そして

具が入っていれば、それでいいのだ。

お店には、3種類ほど

ラーメンがある

「ラーメン」とだけ

ママに伝えたボクのもとにやってくるのは

決まって、醤油ラーメンだ。

茶色いスープに

チャーシューと、ネギと、ほうれん草とメンマ。

ナルトが乗っていれば

ボクは、お店の人と気が合うだろう。

具入り、ラーメンはボクにとって珍しい。

綺麗に、盛り付けされた

ラーメンは、それだけで

幸せを感じる。

麺を一口最初に食べ

スープを一口。

その後に、具をすべて食べるのが

ボクの、具入りラーメンの食べ方。

楽しみは、後に取っておく。

なんて、友達は言うが

そんなの、もったいない。

あるうちに、ささっと

食べてしまう方が、美味しいに決まっている。

ボクは、いつものように

麺から、スープ。

チャーシューから、ほうれん草とネギ。

メンマと、ナルトを素早く食べ

残った麺を、食べていた。

ママは、なにか色々と頼んでは

少しずつ食べている。

ボクの嫌いな、エビチリは

まだ、少し残っている。

エビチリの、上のソースが嫌いだ。

お寿司のネタは、エビが1番好きだ。

甘海老も、蒸しエビも、生エビも。

とにかく、お寿司はエビが好きだ。

あれは、なんだ。

エビチリって。

そんなに、チリでもない。

エビチリよりも、なんかこう

甘チリの方が正解な気がする…。

と、美味しそうに食べる

ママを見ては

心の中で、悶々としていた。

ご飯を食べ終わり

お店を出ると

すぐ近くにある、サーフショップに行った。

昔からあるサーフショップだ。

線路脇のサーフショップ。

駐車場の裏には、ランプがあって

ちょい、強面のお兄ちゃん達が

昼でも、夜でも

スケートしている。

どうやら、今日はなにか目当てのものがあるみたいだ

お店の前に並ぶ、自転車を見て

「かい、これちょっと乗ってみろよ」

と、パパが言った。

「どれー」

と、目を向けると

チョッパーハンドルの自転車を指差していた…。

「いや、パパ。これはちょっと…」

と、ボク。

「いいから、乗ってみろよ」

と、パパ。

見たこともない、長いハンドル

そして、長いサドル…。

恐る恐る、乗ってみると

なんか、いい感じだった。

それよりも、この自転車

ハンドルのグリップの横に

ヒラヒラしている、レザーの小細工が

施されているのだ。

マジかよ…パパ…

と、自転車を試しに漕いでいると

ある事に気がついた。

この自転車、ペダルと後ろのタイヤが直結している!

そう、固定ギアだった。

心配そうに、見つめるママと

なんだか、嬉しそうに見つめるパパ。

試し乗りを終えると

お会計を済ませたパパが車のトランクを開けて

待っていた。

「今日から、自転車これな」

そう、ボク。

スウィートマイバイクの出会いでした。


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