最近わかったこと

えもーしょん 大人篇 #67

最近わかったこと

2016~/カイト・大人

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.11.10

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#67
「最近わかったこと」
(2016~/カイト・大人)

すっかり寒くなった、青山。

ボクの憧れであるマッシュルームヘアーの大学生が前を歩いている。

「あぁ、いいなぁ」

前を歩く彼らはいつも2、3人で行動し

大体みんな同じような格好をして、ぱっと見誰が誰だかわからない。

そんな彼らはボクにとっての憧れ。

ボクもあんなに髪の毛があったらモテるんじゃないか

と、思ってしまう。

彼らの、見えない努力をついつい無視して

きっと、あの綺麗なマッシュルームヘアーは朝5時に起きて

朝シャンから始まり

ナノイーのドライヤーでしっとり乾かし

細かいクシで綺麗にとかし

ベースのワックスを髪全体になじませ

最後にコテを使う人もいるだろう。

まっすぐ、毛先だけをくるりとカーブさせて、スプレーで固める。

この時点で7時にはなっているだろう。

なんという美意識の高さだ

ボクには、さっぱり理解が出来ない。

「ただの時間の無駄じゃね?」

と、心から思ってしまう。

だから、ボクはモテないのかもしれない。

彼らは、いつも可愛い彼女が横にいる。

可愛い彼女と腕を組み、青山をドヤ顔で歩く。

「あ、すみません」とパジャマ姿で犬の散歩をするボクなんか視界にも入っていないだろう。

ボクも、モテたいなぁ。

と、散歩中にそっち系のお店の前を通り

ウィンドウに並ぶ今季の服を見て立ち止まる。

一瞬、着られるんじゃない? と思う自分と

ガラス越しに写る自分。

厚底スニーカーとVANSとコンバース。

キム◯クと同じVANSを買ったのに全然モテない。

ジャスティンビー◯ーと同じ靴だって持っているのに。

どうして?

いつになったら、この服を着ればモテます。

なんて服が出るのだろうか。

魔法でも呪文でもなんでもいいから、とりあえずモテる服が欲しい。

いや、服じゃなくて

モテる魔法、呪文が3千円なら今すぐにでも買って試してみたい。

あぁ、モテたいなぁ。

と、感のいいあなたならきっと気付いているはず。

そう、原稿行き詰まっている。

やばい。

やばい。

やばい、と念じると気がつけばモテたい。

と、綴り始めるボク。

こんなにも、素直にモテたいと公言しているのに

まったく、モテない。

モテ期はいつになったらやって来るのだろうか。

こっちはいつでも準備ができているのに…。


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