仮面と本心

海と街と誰かと、オワリのこと。#37

仮面と本心

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.03.09

大好きな海を離れ、アーティストになったオワリ。居心地の悪さを感じながら、それでも繰り返されていく毎日のあれこれ。「本当のボクってどんなだっけ?」。しらない街としらない人と。自分さえも見失いかけたオワリの、はじまりの物語。


オフィスに遊びに来た友達のジンと合鍵を作るため目黒駅の方へ、夏の空の下を歩いている。久しぶりに肌がジリジリといている。バイトのあと、さきの撮影場所へ向かうと話したら。「それは今日も泊まってくれ」ってことだよと彼は言った。それから、彼に説得され僕も合鍵を作ることにした。

鍵屋さんに鍵を渡し、出来上がるまで2人でセブンティーンアイスを食べる。鍵屋さんは大通りにあって、お店の横に置いてある椅子に座り通りを走る車の値段を当てながら時間を潰した。しばらく経ってもまだまだ出来そうになく、今度は通り沿いに並ぶマンションの家賃が幾らかと予想し始めた。これはなかなか盛り上がった。2人で楽しく過ごしていると、鍵屋さんが何しているのか。と聞いてきて鍵を待っている、と伝えると明日僕たちが取りに来ると思っていたらしい。それから15分ほどで鍵は完成しジンを駅まで送ってオフィスに戻った。

5時になって、さきの所へ向かう。時間があるから歩いて向かうことにした。昼間の暑さはなく、夏の気配を感じるとても心地のいい風が吹いている。ジメジメしているわけでもなく、寒くもなく。暑くもない。夏になる前の夕方が一番好きかもしれない。

さきがメッセージで送ってくれた場所に着くと、ロケバスが止まっていたのですぐにわかった。違ったらとても恥ずかしいので少し離れたところから、「多分、着いたよ」とメッセージを送った。すると、ロケバスからさきが出てきたので彼女の方へ向かった。

さき「お疲れ様」

僕「さきもお疲れ様」

さき「もう少し時間かかりそうだから、一緒に待ってる?」

バスの中の人達と目が合い、「こんにちは」と挨拶した

僕「迷惑かけたくないから、散歩して待ってるよ」

さき「わかった、終わったら電話するけど暇だったら戻ってきてね」

僕「うん、ありがとう」

近くの雑貨屋さんへ向かい、合鍵のキーホルダーを探しに行くことにした。雑貨屋さんには熊と猫と犬と鯨とお花のキーホルダーがある。そういえば彼女が犬派か猫派かもわからないのか。と改めて僕たちは出会って日が浅い事を感じた。さきからもらったキーホルダーがお花だったのでお花のキーホルダーを購入し彼女の元へ戻る。


続く



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