本を読む時間

Emotion 第43話

本を読む時間

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.09.20

「唯一無二の存在になりたい」オワリと「計画的に前へ進み続ける」カイト。ありふれた日々、ふわふわと彷徨う「ふさわしい光」を探して、青少年の健全な迷いと青年未満の不健全な想いが交錯する、ふたりの物語。


第43話

カイトが就職活動を始めてから3週間ほど経ったある日、いつものカフェで原稿を書いていると彼から連絡があった。久しぶりにお茶をしよう。と言うので駅前のカフェに居ることを伝えると、これから向かうと返信があった。こういう時は到着までにどれくらい時間がかかるのか、教えてほしい。原稿は終わる気配がないので別にあと3時間ほどは大丈夫なのだがもし仮に彼がどこか遠くにいて新幹線に乗ってこちらにやってくるとなると、僕が原稿を書き終えるまでには着かないだろうし、それまで待っていられない。何よりあとどれくらい待てば良いのか目安だけでもないと時間の進み方が全然違う。

パソコンに向かって頭も心も記憶も振り絞るが言葉が見つからず、動画を見て何も考えない時間を過ごすがやはり時間だけが過ぎて一文字も進まず、なんでもいいからと文字を並べてみてもそこには何の意味もない言葉が並んでいるだけ。読めるが理解できない外国の言葉のようだった。彼から連絡が来てから2時間ほど経過したが一向に来る気配がないので、トイレに行くついでにお店の中をぐるぐると周りレジの横の本棚に置いてある本をいくつか借りて席へ戻った。3冊のうち2冊は冒頭の2行で作者の話し方が合わないと感じ断念。最後の一冊は落ち込みたくないので後ろから読むことに。まさかのミステリーで犯人が判明してしまい。途中経過をパラパラと読んでみたが、何となく犯人がわかっている前提で進めるタイプだったので自分の文章を進めることにした。

コーヒー3杯とモンブラン、冷麺にガトーショコラ。

1話分の原稿を書くだけでもこんなにエネルギーが必要になってしまった。何かを食べるということは進まない原稿から逃げているだけだが、なんとか書き終えたのでよしとする。問題はここからだ、原稿は書き終えたがカイトが来ない。少し前に何時くらいに着くかな? と連絡をしてみたが全く返信はない。僕はここからどう少したら良いのだろうか。コンビニで雑誌を買うべきか、レジ前の店主の好みの本を読んで彼の心を感じるべきか。。。


続く



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