New kid on the block. #8

ジェットコースターロマンス。

Contributed by Ryo Sudo

People / sep.21.2020

anna magazine編集長・須藤亮がステイホーム中に考えたことと、すこしだけ旅の思い出。

#8

「ロードトリップの一本道」にはロマンがある。けれど「ジョギングの一本道」には、リアリティしかない。

快適なジョギングコースを探すのは意外と大変だ。「距離がちょうどいい」とか「信号や交通量が少ない」とか、走りやすさに直結する要素はもちろんだけど、僕にとって一番重要なのが「適切なタイミングで、適切に風景が切り替わる」かどうか。どんなにキレイな風景だとしても「ずっと先まで見えている一本道」を走るのは、実は心理的にかなりタフなのだ。走れど走れど一向に近づかない一本道の「見えない未来」は、意識高い系気分でクールに走り始めた僕のココロを、簡単にダークサイドへとひきずりこんでいくのである。

例えばフルマラソンの大会では「海の上を走り抜ける」とか「どこまでも続く桜の回廊」とか、その地域が一番見て欲しい「見どころ一本道」が必ず用意されているものなのだけど、たいていの場合、その道はまっすぐでどこまでも長い。しかもだいたい後半の勝負所だ。でも実際のところ、ガクガクとおぼつかない足取りでラスト10キロを走る僕みたいなウィークエンドランナーにとっては、ゆっくりと美しい景色を楽しんでる余裕なんてない。その地域を深く愛する主催者のみなさんとしては「百花繚乱!美しすぎる景色に、全米が泣いた!」という気分に浸って欲しいに違いない。けれど、実際の気分は「先の全く見えない展開に、1万人が震撼した!」なのである。

だから僕はジョギング中に、とにかく頻繁にコースを変更する。伴走者には「落ち着きがなくて楽しくない」と責められることも多いけど、ダーク・フォースとの熾烈な戦いを繰り広げているのだから、少しは理解して欲しいものである。毎日手を替え品を替え、荒川土手の一段下を走ってみたり、ひとつ先の裏道に入ってみたり。どんな小さな変化だっていい。景色がほんのちょっと変わるだけで、「ランニングってキツイ。バトルランナーみたいでキツイ」としぼんでいた気持ちが、「ランニングって最高。フォレスト・ガンプも最高」という感じで、どこまでだって走り続けられそうな気分になる。一瞬ね。結局のところ、人間の気持ちって、そのくらい単純なものってことだよね。



大きな玉ねぎに思いを馳せながら、東京を代表する美しい坂を軽やかに駆け降りる。日本を揺るがす大事件を見ていたはずの大きくて古い門を抜けると、広がるニューヨークシティセレナーデ。あれほどつぎつぎとバラエティ豊かに景色が変化する「皇居ラン」の人気が衰えないのは、考えてみればあたりまえのことなのだ。(しかも一周ぴったり5キロ、信号なし。パーフェクト)

一本道より、分かれ道。連続よりも非連続。ヒューマンドラマよりも、ハラハラドキドキ・ジェットコースターロマンス。つまりそれが、僕の理想のジョギングコースなのである。



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