1人暮らしの18歳

えもーしょん 大人篇 #76

1人暮らしの18歳

2016~/カイト・大人

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.12.28

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#76
「1人暮らしの18歳」
(2016~/カイト・大人)

あれは、1人暮らしを始めた18歳のころ

相変わらずモテたい欲が強かったボクはある女性に恋をした。

もう今となってはすっかり消えてしまったけど

当時は駅で電車を待つ女の子に声をかけることが普通にできた。

忘れもしない、18歳冬の海浜幕張駅

京王線のホーム、蘇我駅行きの電車をあの子は待っていた。

158cmの可愛らしい金髪

「こんばんは」とボク

びっくりしながら、イヤホンを外すあの子

「こんばんは」と小さな声で言った。

ボク「今日、めっちゃ寒いですね」

あの子「あ、うん」

ボク「いつもこの時間の電車なの?」

あの子「うーん、今日はちょっと早いかも」

ボク「あ、そうなんだ」

あの子「若いね、君」

ボク「20です」

あの子「3つ下かぁ」

長い沈黙が続く、18歳だとバレたくないボクは必死だった。

けど海浜幕張から蘇我駅までの数駅の間に

どうにか連絡先とデート約束をゲット

後日、蘇我に映画を観に行った。

あの子は、期待を裏切らなかった黒い軽ワゴン車

ハンドルは白いモフモフが付いていて、長年使っているせいか結構汚い

車の灰皿は、タバコの吸殻が溢れ

ドリンクホルダーには、何個ものコーヒー。

最後に、きっとUFOキャッチャーで取ったんだろう

日焼けしたクマのぬいぐるみが3つ

運転席の前と、後部座席、後部座席の足元に落ちていた。

これがヤンキーの車かぁ…

初めてのガチヤンキーに圧倒されながらも、しっかり映画を見て

とんかつを食べて、ゲームセンターでUFOキャッチャーをして

スタバで甘いコーヒーを飲んだ。

ちょっと、この人とは付き合えないかも…

家まで送ってもらう道中、そればっかり考えていた

足つぼ付きの黒と金のサンダルを履いている女の子とは無縁だったのに

突然、やってきてしまってまだ気持ちの整理が終わっていない。

あの日海浜幕張駅で見たあの子は、もっとストリート感が強く

ここまで、ヤンキーとは思わなかった。

家の前に着き、強めにサイドブレーキをかけタバコを吸う彼女

「で、どうする? 付き合う?」

なんか、カツアゲされているようだ

ボク「いや、うーーーん」

はっきり言わなかったこの一言で怒らせた

彼女「あ? なに? どっち?」

ボク「あ、はい! はい! 付き合います!」

彼女「よろー」

ボクは車を降りた。

彼女「じゃ、後でねー」

後でね? またね? の間違えか…疲れたから寝よう。

家に帰り、ぐっすり眠った。

続く


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