えもーしょん 中学生篇 #12
どうして、旅に出たくなるのか。
2010〜2013/カイト・中学生
Contributed by Kaito Fukui
People / 2020.02.04
小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!
#12 「どうして、旅に出たくなるのか」
(2010〜2013/カイト・中学生)
「みんな、働いてるなぁ」と
思いながら、午後のロードショーを見る。
幸せだ。
今日も始まった。
B級映画感が漂う
冒頭3分。
よくわからない、街並みの映像。
中途半端に画質が悪いところが
またいい。
ソファと、緑茶。
じゃがりこと、スコーン。
ステキな組み合わせだ。
今日の映画は
ある、青年が彼女に振られ
自分探しの旅に出る映画。
ざっとそんな映画だ。
彼はとにかく旅に出た。
今、居る国がどこか
この列車がどこへ向かうのか
彼にとって、そんなことは
どうでもいいようだ。
旅の中で、小さな田舎町に辿り着く。
「もう、酔って全てを忘れてしまいたい」
と、彼は言った。
小さな、バーに入り
カウンターに座り
「テキーラをください」
ウェイトレスは、不審な目で彼を見た。
テキーラを一気に飲み干し
「はぁ」とため息をつき
落胆した様子。
しばらくして
「何か、他に注文は?」と
ウェイトレスが言った。
「ビールを」
「どこから、来たの?」
「ニューヨークの外れの方」
「ずいぶん、遠くから来たのね」
「うん、まぁ」
「何しに来たの?」
「何かを捨てて、何かを探して、何かを見つけに来た」
「貪欲ね」
ウェイトレスは、呆れた様子でどこかへ行った。
彼は、少し戸惑った様子で店を出た。
夜になり、ボロボロのホテルの一室で
振られた彼女の写真を削除していた。
やはり、まだ未練があるようだ。
最後の1枚を消した時、寂しい気持ちが
込み上げると同時に
どこか、スッキリと諦めに近い
気持ちが生まれたようだ。
すると、
さっきのウェイトレスが気になり
部屋を飛び出し、バーへ向かう。
バーに着き
さっきと、同じ席に座る。
「何か、注文は?」
さっきのウェイトレスだ。
彼に気づいた様子で
「あら、まだいたの」
「何か、見つかった?」
彼は言った
「いや、わからないけれど」
「突然、君に会いたくなったんだ」
はぁ。終わった。
はい、そう。
この後の展開は、みなさんの想像通り
2人は恋に落ち、そして大ゲンカをし
彼はニューヨークへ戻るが
忘れられず
また、彼女もなかなか忘れられず
彼は、列車に乗り田舎町へ
彼女も、列車に乗りニューヨークへ
彼が、到着すると彼女は居ない。
彼女が、到着すると彼は居ない。
すれ違う2人。
最後は再会し
濡れ場でフィニッシュ。
「オー、マイ、ガー」
期待を裏切らない、B級感に
ボクは、思わず拍手を送った。
それに、エンドロールの
名前が、ズラーーーーーーっと
流れる横に、NGシーンが映し出され
さらなる、B級感に感動してしまった。
はぁ、良かった。
鳥が、チュンチュン鳴き
風の音も気持ちいい。
午後、3時の窓から入る
太陽の光は、なんとも言えない
気持ち良さだ。
はぁ…
ボクは、いつものように
深い昼寝についた。
続く
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Kaito Fukui
1997年 東京都出身 幼少期から波と戯れ、サーフィン、スケートボード、恋に青春。 あの時、あの頃の機微を紡ぐように幾層ものレイヤー重ね描き、未来を視る。 美化されたり、湾曲、誇張される記憶を優しく繊細な浮遊感で!