TYPE OF MOVIE-映画を観る男と女 #4
「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ
★アディアオス」を語る男と女
Illustration : TOMIMURACOTA
People / 2018.10.01
「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディアオス」をドキュメンタリー映画が好きな男と邦画が好きな女が鑑賞。
「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディアオス」について
1997年、バンド「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」が、世界の音楽シーンに驚きと至福のセンセーションを巻き起こした。さらに、名匠ヴィム・ヴェンダースが彼らの音楽と人柄に惚れ込んで監督したドキュメンタリー映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』が、全世界で破格のヒットを飛ばし、アカデミー賞®長編ドキュメンタリー賞にもノミネートされた。それから18年……、現メンバーたちが“アディオス”世界ツアーを決行。そして、そのツアーの様子を映画化したのが今作「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディアオス」だ。
男と女のプロフィール
男(31歳)/旅にまつわる映画、人物ドキュメンタリー、たまに、クラシック映画を見るという男。音楽に関して、特定のジャンルやアーティストの曲を聴くことはほぼなく、誰かが選曲した、無意識に耳に入ってくる音楽を聴くことが好きだそう。最近、ずっとかけていたメガネを外し、ノンメガネスタイルになった。
女(27歳)/10代の頃は岩井俊二、西川美和、園子温など日本の監督作品ばかり観ていたという女。「全体的に薄暗いものが好きなんですね……」とのこと。今は気になったものを手当たり次第に観ているらしく、最近だと『グレイテスト・ショーマン』(「これは明るい!」らしい)がよかったそう。国内のインディーズバンド好き。そして、今も昔も変わらずオンメガネスタイル。
男と女の映画レビュー
Q1.「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディアオス」のみどころは?
男/誰もが過去の出来事だと思っていた「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」を蘇らそうとした場面。現役を退き後世を楽しもうとしていた老人たちがもう一度奮起して夢中になっている姿。死ぬ寸前までそんな気持ちを持ち続けられる人たちって素晴らしいし、羨ましいと思いました。キューバ音楽に興味があるなしに関わらず、見ていて引き込まれる内容でした。
女/彼らを知っている人にとっては、いまはなき姿に目にすることが見所だと思いますが、わたしにとっては、キューバの生活がどういうものなのか、そのなかで音楽がどう生業になっていくのかを知れる、が見所でした。
Q2.一番印象に残っているシーンを教えて
男/バンドメンバーの一人一人が発する一言を切り取ったシーン。何気ない言葉に重みを感じます。特にボーカルのOMARAが『歌う理由』を語っていた場面、COMPAYが語るキザな言葉が印象に残っています。
女/オマーラとイブライムがリハで手を取り抱き合って踊るシーン。最高に幸せそうな顔でした。音楽があれば他人と手を取り合って踊ることができるなんて最高だなと思ってました。
Q3.バンド「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の音楽を聴いて、キューバ音楽にどんなイメージを持ちましたか?
女/明るいけど悲しい。ブルースをもっと人々と楽しめるように作った音楽だなという印象です。
Q4.彼らの音楽は、なぜ世界的なヒットを記録することができたと思いますか?
男/メロディーとか歌詞の素晴らしさといった理屈的なことより、奏でる人たちの人間性と生き方が詰まっているからじゃないかと思いました。あとは、単純に「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」って名前の響きがカッコイイから。なんとなくバンド名のソシアルには、キューバ社会と世界を繋げる深い意味があるように感じました。
女/解放感があるからでしょうか。「とにかくハッピー!」みたいな音楽じゃなくて、「苦しいけど今は踊っておこう」「悲しいことがあっても歌おう」みたいな感じだから、人々に寄り添えるんじゃないですかね……よくわからなくなってきましたが。そういう、解放感のある音楽だから、キューバとアメリカの国交回復という明るいニュースと共に祝福されたのかなと思います。
Q5.「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディアオス」にキャッチコピーをつけるなら?
決してキューバ音楽はメジャーな存在ではないですが、その魅力を感じることができます。また「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」が、世界の人たちにキューバ音楽やキューバという国の素晴らしさを知るきっかけを与えてくれます。女/まだ出会えるだけ奇跡。
なんでもそうですけど「いつか」なんて思っているうちに、もう見れなくなってしまうものなんですよね。こうやって映像が残されて、世界的に公開されるだけ奇跡だなと思ってつけました。
そして、3人目(男)のレビュー
音楽好き、キューバ好きが楽しめる作品!
ときどき聞く「音楽に国境はない」という言葉。この映画を観て、改めてその言葉は本当なんだと思った。「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の音楽を通じて、キューバという国の雰囲気やメンバーたちの人となりを感じることができる。「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディアオス」を鑑賞した後、彼らの音楽に対して、男は「ポジティブな気持ちになれる音楽」と感じ、女は「解放感のある音楽」と感じている。しかし、ただ明るくてハッピーになれる! みたいなそんな単純な音楽ではない。彼らが奏でるリズムや歌詞には、バンドメンバーの生き方や価値観が詰まっていて、聞いている人の気持ちをぐっと持ち上げるだけのパワーがある。人種や国柄に関係なく、そこに共鳴できる人たちが多かったからこそ、「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」は世界的な大ヒットを記録することができたのだろう。
今作はそういった音楽の素晴らしさはもちろん、キューバのカラフルな街並みや人々の暮らしを垣間見ることができるためそこにも注目してほしい。「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」を知っている人だけでなく、音楽好きやキューバ好きも楽しめる作品になっている。あと、少し前向きな気持ちになりたい男女にもおすすめだ。
製作総指揮:ヴィム・ヴェンダース 他
監督:ルーシー・ウォーカー
出演:オマーラ・ポルトゥオンド(ヴォーカル)、マヌエル・“エル・グアヒーロ”・ミラバール(トランペット)、バルバリート・トーレス(ラウー)、エリアデス・オチョア(ギター、ヴォーカル)、イブライム・フェレール(ヴォーカル)
原題:Buena Vista Social Club: Adios/2017年/イギリス/カラー/ビスタ/5.1chデジタル/110分/字幕翻訳:石田泰子
後援:駐日キューバ共和国大使館 インスティトゥト・セルバンテス東京 日本人キューバ移住120周年
配給:ギャガ
© 2017 Broad Green Pictures LLC gaga.ne.jp/buenavista-adios
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