何かになりたい

Emotion 第1話

何かになりたい

Contributed by Kite Fukui

People / 2023.07.11

「唯一無二の存在になりたい」オワリと「計画的に前へ進み続ける」カイト。ありふれた日々、ふわふわと彷徨う「ふさわしい光」を探して、青少年の健全な迷いと青年未満の不健全な想いが交錯する、ふたりの物語。


第1話

何かになりたい、その想いをエンジンに日々バイトに明け暮れるオワリ19歳。
何かの何かは分からないまま、だらっと受験シーズンが過ぎ、まだまだ分からないまま高校を卒業した。東京に出たら、1人暮らしを始めたら。何かが変わるかもしれない。何かがわかるかもしれない。そんな思いも虚しく、6畳ワンルームの小さな部屋で今日も「自分とは何か」自問自答している。

上京して、何も出来ないまま半年が経ってしまった。
ただただ家とバイト先を往復する毎日。
休日はインスタで自分に出来そうなことを探す。この人みたいになら僕にも出来るのではないか
これくらい僕にも出来るのではないか。
しかし、フォロワーは780人。底辺中の底辺。

とにかくなんでもいいから、何かしないとダメだって事は薄々感じている。
でも、いざやってみようと思うと本当に出来るのか心配になる。
こうやって悩んでいる間にも時間は過ぎて、出来るか出来ないか。そう考えている間におじさんになってしまうんだと分かっているんだけれど。。。。

自己啓発系youtuberは「出来るか出来ないかではない、やるかやらないか。だ!」と言っている
そんな事は分かっている。やってみたいけど、失敗したときに挫折して立ち上がれないかもしれない自分を心配しているんだ。

「カメラマンになら僕もなれるかもしれない」
心のどこかで囁いた。

「大丈夫、大丈夫」と言い聞かせてカメラを買った。カメラ屋さんを出て家に向かう帰り道には「大丈夫?大丈夫?」になっていた。カメラを買ったら逃げないと自分にプレッシャーを与えるんだ。そう思っていたけれど、そのプレッシャーは思っていたよりも大きな物だった。

それから写真を撮ってみたが、三日も持たなかった。
「カメラマン どうなる」と検索をしても皆口を揃えて言うことが「とにかく撮れ」だった
とにかくって言ったって、何を撮ればいいのか分からない。

「もう少し頑張ろう、もう少しだけ」と自分を励ましつつもメルカリに出品。
売れてしまえばキッパリ諦められるのに。と心のどこかで諦めるきっかけを既に作っている。
これは保険だ。才能が無かったと自覚する前に売れてしまったからしょうがない。と誰かのせいにすることと同じだ。

今ここで自分には才能があると誰かに褒めてもらえれば続ける勇気が持てるのに。
少しくらい特別な存在でいたいといつも思う。
インスタに写真を載せてもいいね!6件。
母、妹、幼なじみのカイト、高校の友人。最悪だ。自分の写真はゴミだった。

このまま何にもなれないまま、何も出来ないまま毎日バイトして。気がついたら社員になって、いつかは何かになれるって。そう思っているだけで結局何もしないで。
毎日家に帰って、Netfrixで映画とかアニメ見て。飽きたらなんかないかなぁ、ってYouTube見て。それにも飽きたらインスタで女の子ばっかり見ている大人になってしまうのだろうか。。。
そんなのは絶対に嫌だ。

僕ってそもそも何が出来るのだろうか。

僕ってなんなの。誰なのだろう。


続く



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