怪我には気をつけて

えもーしょん 小学生篇 #43

怪我には気をつけて

2003〜2010/カイト・小学生

Contributed by Kaito Fukui

People / 2020.07.29

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#43
「怪我には気をつけて」
(2003〜2010/カイト・小学生)

波のない日が続いている。

1週間も、スネ〜ヒザ。

週に2日はフラット。

「これは、よくないな」

呆れた様子。

いつもの陸橋の上でパパが言った。

「どうする?」

千葉の方へ行けば全然サーフィン出来ると

ボクは知っている。

「千葉の方行くか」

かならずこの言葉が返ってくると確信していた。

だが、しかし

「台風出来そうだよな」

それは、予想もしていない答えだった。

今すぐでも、サーフィンをしたいボクには

とても信じられない。

今週末は、湘南で待機。

週半ばから反応してくる

台風のうねりを待て。

パパの答えはこうだった。

呆れたボクは

そそくさと、家に帰り

海パンに着替えて、海水浴をしている

家族の横でボディーボードをする事にした。

最初は良かった。

本当に、最初の3本ほどは

とても良かった。

いつもは、波の上に立っているので

目線が高い。

ボディーボードは、目線が低く

また、違った景色だった。

最初の3本は…。

次からは、もうダメだ。

波に乗ったら、体が勝手に立とうとしてしまう。

そして、立ってしまった。

ビーチで見ていたパパは笑っているが

ピーーーーピーーーー!!!

と、ライフセーバーが

こちらに向かって走って来る。

「かいとー!!!!!!! 立つなー!!!」

と、知り合いのお兄ちゃんだった。

「ごめーん!」

と、笑っているパパのもとへ行く

「よく、立てたな」

「以外と出来るね」

「ちょっと貸してみろよ」

「いやー、やめた方がいいよ」

「大丈夫だよ」

「そう?」

「余裕だよ」

パパはそう言って自慢げに

ボディーボードを持って海へ行った。

スネ〜ヒザの海も

本当にたまーに、奇跡的な一本だが

モモくらいの波が来る。

それを逃せば15分ほど波がこないことは

先程まで見ていたパパは

十分に理解しているはず。

じーっと、沖だけを見つめて

ぷかぷかと浮かぶパパ。

乗れるわけないよなー。

ビーチで体育座りをして

ボーッと見つめていた。

沖の方に黒い影が見える。

「あー、やっとかぁ」

「見えてるのかなぁ」

「わかってなさそうだなぁ」

奇跡の一本を目の前に

何も反応しないパパを少し心配していた。

「あー、あれは完全に気づいてないなぁ」

「うーん」

「うーん」

「うーん」

「あー、そろそろ動かないと…」

やっと気づいたパパ

全力でパドルをするが

サーフボードではない事に

今頃気づいたのかもしれない

少し焦った様子で

必死にパドルをしている。

「あー、もうちょっと」

「いやー、ダメかもなぁ」

「あー、大丈夫か」

いい感じに、波を掴んだが

ここからが本題

38歳メンズ、ボディーボードに

立てるのか、立てないのか…。

続く


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