ボク

えもーしょん 小学生篇 #1

ボク

2003〜2010/カイト・小学生

Contributed by Kaito Fukui

People / dec.02.2019

プロサーファーの夢をあきらめ、今はイラストレーターとして活躍するKaito Fukuiさん。小学生から大人になるまでのエモーショナルな日々をコミックとエッセイで綴ります。幼い頃から現在に至るまでの、時にほっこり、時に楽しく、時に少しいじわるで、そしてセンチメンタルな気分に包まれる、パーソナルでカラフルな物語。

小学生篇、中学生篇、高校生篇、大人篇。1ヶ月の4週を時期ごとに区切り、ウィークデイはほぼ毎日更新!



#1 「ボク」 (2003〜2010/カイト・小学生)

8月なのに
クリスマス並みに、電飾が光る湘南モールフィルの駐車場を
ボクは車の中からウトウト眺めていた。

「寝たら、誕生日が終わっちゃうよ」
そう、慌ててボクの体を揺さぶるのは
隣に座っている、おばあちゃん。

「そっとしてあげなよ」と
運転席からタバコをふかし
パパが言う。

心配そうに、後ろを振り向くママ。

パパがタバコを吸うと
ボクは後部座席の
5センチほどしか開かない窓を開ける。

革張りのシート、溶けたWAX、パパのタバコの匂いに揺られ
後部座席で眠る、誕生日の夜が
1番普通の家族を感じられる瞬間で好きだった。

ボクの家族は、少し変わっていて
学校ではよく、ヒッピーと馬鹿にされていた。

両親の教育方針は少し変わっていて
主に、2人がこれまで学校で習った事が
社会に出て、役に立たなかったら
その教科は勉強させず
他の経験をさせる。というものだ。

パパは、元祖モンスターペアレンツで
あまりにも学校に来ないボクを
心配した、担任の先生に

「君は、大学卒業後社会に出てサラリーマンとして働いた事はあるか?」と
平気で言えちゃう人だ。

当然、殆どの先生が
大学卒業後、学校で教員として働くから
学校の中の社会でしか生きていない。

「そんな奴らが、俺の息子に
社会を語るな、教えるな」と
よく言っていた。

だから、学校はあまり行かせてもらえず
毎日、サーフショップのおじちゃん達とサーフィンしたり、美味しいご飯へ連れて行ってもらっては、旅に出る生活をしていた。

そんな、ある日。

近所に住む、同い年の男の子から
誕生日会に誘われた。

小学3年生で遂に、初めて
同い年の学校の友達と遊ぶ。

ボクは、普段みんなが
何をしているのか、気にもしていなかったから
あらためて誘われると
なんだかワクワクした。

誕生日会当日
ママが気を使って、一応
彼に渡すプレゼントを用意してくれていた。

普段
おじちゃん達に育ててもらっているから
挨拶などの礼儀作法は
心配していなかったようだ。

「行ってきます!」と振り返ると
ママは、嬉しそうに少し泣いていた。
パパも、少し照れていた。

友達の家に着いて
彼の部屋を見せてもらった。
見たことない、駄菓子やゲーム機
カード、変なオモチャに驚いた。

触っていいのか、わからないし
壊したらめんどくさそうだから
とりあえず友達のお母さんに
プレゼントを渡して
案内された、席に着く。

誘ってくれた
友達以外、ボクは他の子を知らない。

みんなは、ボクを知っていたみたいで
なんだか、視線が痛い。

もう、プレゼントも渡したし
今日、波あるから帰ろうかな。
と思った時
ママの言葉がフラッシュバックする。

「かい、つまらなくても
波が気になっても、帰ろうなんて思わないのよ。約束よ」

あぁ、ちくしょう。

ボクは諦め、なにか見えない覚悟を決めた。

自分の誕生日でもないし
みんな知らないし
ゲームやカード、テレビの話をしている
みんなの会話についていけないから
正直、本当につまらなかった。

つまらなそうに、1人でお菓子を食べているボクを見かねた
友達のお母さんが
これ、知ってる?と
ゲームボーイアドバンスを貸してくれた。

カセットは、ポケットモンスターの
「グリーン」と「ヨッシーの万有引力」

一通り、使い方を教えてもらうと
自分の思う通りに、動くキャラクターに感動してしまい
我を忘れて、ゲームに没頭した。

気がつくと、周りには他の友達達が
ボクを囲み、コツや裏技を教えてくれた。

なんだか照れ臭く、嬉しい気持ち。

辺りは暗くなり
そろそろ、お開きの時間。

ママが迎えに来てくれて
誘ってくれた友達のお母さんと
嬉しそうに話をしては
何度もお辞儀をしていた。

玄関の2人と目が合い
「ありがとう」と
ゲーム機を友達へ返し
玄関へ向かう。

「海東君、波がない日はいつでも遊びに来てね」と友達のお母さん。

「うん。ありがとう」とボク

玄関先で見送ってくれる友達と
友達のお母さんへ手を振り帰路に就く。

誕生日会で、最初は視線が
冷たかった話や
見た事がない駄菓子の話
遊戯王って言うカードの話や
ゲームボーイアドバンスの話
初めて見た噂のポケモンの話
少し、遠回りして帰るママに
全部話した。口が塞がらなかった。

ママは、本当に嬉しそうだった。

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