Emotion 第28話
家
Contributed by Kite Fukui
People / 2023.08.24
第28話
原稿が進まないまま、お昼になってしまった。家には多くの誘惑がある。原稿が進まない時に頑張る用。とアイス、お菓子、カップラーメン。体に悪いものは大体美味しく、何かがうまくいかない時ほど欲しくなるものだ。
とりあえず、考えても何も浮かばないし。お腹が減っては何も出来ない。とカップラーメンにお湯を注ぎ3分待つ。やっぱ暑い夏には辛いラーメンだよな。と3分待ったラーメンを3分で早食いし、片付けると睡魔に襲われそのままベッドにイン。
夕方17時のチャイムで目が覚める。やってしまった。と深い罪悪感に包まれると同時に、またやってしまったのか。と自分に対して悲しくもなる。
急いで頭も心も体も振り絞り、とにかく文字と文字を繋げてなんとなく1つの塊にしてみる。ようやく調子が整ってくると、消したり足したり改行したりしてなんとか締め切りまでに間に合った。
ふぅ、と一息ついて再びベッドに戻ると。プップープップー! と外からクラクションが聞こえた。また向かいの団地の大学生が集まっているのか。彼らの笑い声や奇声にも慣れ、その中でも寝られるようになった僕はだんだんと眠りに向かって行った。あー、来た来た。と気持ちの良い寝落ち寸前の頭の軽さがやって来ると。プップープップー!!! と再びクラクション。もう!!! とカーテンを開けると、そこには都会ではあまり見かけない漁師さんのように真っ黒に日焼けしたカイトが大きなバイクにまたがりこちらに手を振っている。
僕「もう帰って来たの?」
カイト「おー!久しぶり。相変わらず白いな」
僕「家にいるからね」
カイト「行こうか!」
僕「どこに」
カイト「どこでも良いよ!」
と、彼はバイクを止めて僕が乗るスペースを整えて始めた。僕はもしかしたら行く気になるかもしれない。そう思ってこの暑い日に長袖長ズボンを着て家の戸締りをし、また道中不安になったら見返すようにとそれらをカメラで撮り。靴を履く。もしかして僕は楽しみだったのかもしれない。
続く
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